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Faculty of Medicine化学教室

教室専任教員

教授
准教授
講師

教室概要

化学教室は、杏林大学医学部医学進学過程の学生の教育を目的として、石川勉氏を初代教授として、昭和45年に開設されました。平成5年、福嶋義博前教授の着任とともに、医学部初年度の学生に対する生化学の基礎教育と、「イオン輸送ATPaseのエネルギー変換機構」をテーマに研究を行ってきました。現在は、学生の基礎教育を担当するとともに、研究面では、イオン輸送ATPaseの反応速度論的研究をさらに進め、培養細胞を用いた蛋白質発現系を用いたゴルジ体に存在するイオン輸送ATPaseの機能調節や細胞内輸送機構の解明、さらには、神経細胞におけるゴルジストレスの影響などの研究に対象を広げています。

教育の特色

学生教育においては、生体物質の化学的基盤を講義する「生体化学」と、現代医学研究が基盤とする生化学実験法の初歩段階を学ぶ「生体化学実習」を、医学部初年度の学生に対して行なっています。いずれも、医学部で学ぶ、代謝生化学や薬理学で学習する内容の基礎となるものです。また、高校で化学を選択せずに進学した学生を対象とした「入門化学」も担当しています。高校理科と大学における科学の知識の隔たりを埋め、現代生化学を修めさせるため、スタッフ一同協力して、医学部の初年度教育に邁進しています。

社会的活動

教室員の主な所属学会は、日本生化学会、日本生物物理学会、日本農芸化学会、日本神経化学会等です。それぞれの学会発表の機会において、常に新しい情報を発信しています。

大学院の特色

当研究室では、スタッフの人数は少ないですが、生化学の基本的な実験技法を学ぶことができます。また、将来の研究活動に必須の、独創的、創造的発想の元となるような、科学的な思考方法を学ぶことを目指します。

当研究室の現在の研究テーマは、以下に紹介していますが、大学院・医学研究講義IIや研究交流会などでも紹介しています。

研究テーマ

細胞内では様々なイオンが生体反応の制御に関与しています。細胞内イオン環境の変化によって、細胞分裂や細胞運動、遺伝子発現など様々な細胞応答が起こります。細胞内のイオン環境を維持している働きをしているものが、さまざまなイオン輸送 ATPase です。この ATPase の中には、イオン輸送機構や機能調節機構が十分には明らかになっていないものもあります。また、細胞内やオルガネラ内腔のイオン環境の乱れは、細胞を異常な状態に陥らせ、細胞死を引き起こす結果、神経変性疾患などの疾病を引き起こします。

我々の研究室では、ゴルジ体に存在する Ca2+/Mn2+輸送ATPase の機能解析やゴルジ体内腔へのイオン輸送を調節する仕組みの解明などを目指して研究を進めています。また、近年は、ゴルジ体などのオルガネラのイオンバランスの乱れなどによるオルガネラストレスにより引き起こされる神経変性疾患の発症機構の解明へと、研究が発展してきています。

Ca2+/Mn2+ 輸送 ATPase SPCA の機能解析

細胞内で様々な細胞応答を制御する Ca2+ は、Ca2+チャネルや Ca2+結合タンパク、そして Ca2+輸送ATPase の働きで、その細胞内動態が厳密に調節されています。Ca2+/Mn2+輸送ATPase である SPCA もその調節を担う分子です。比較的最近になって見出された SPCA の生理機能には、まだ不明な点が多くあります。特に、SPCA が細胞内でどのような分子と関わりを持つのか、どのような細胞環境で活発に機能するのか、またそれらが細胞内の Ca2+動態の維持にどのように寄与するのかなど、まったく分かっていません。我々は、SPCA の相互作用分子の探索と解析、特異的阻害剤の探索などを通して、この分子の生理機能の解明を目指しています。

細胞内ストレス応答と神経変性疾患

神経変性疾患で見られる細胞死は、神経細胞に特有な不良蛋白質の蓄積やオルガネラの機能障害が引き金となり、オルガネラ間コミュニケーションの破綻が原因で起こると考えています。その仮説のもと、未だ機序の不明な孤発性アルツハイマー病の発症機序の理解と根本的治療法の開発に向けた基盤研究を行っています。研究対象としては、ヒトを含めた霊長類からげっ歯類に至るまで、様々な哺乳類のニューロン・グリアなどの神経細胞が主な研究材料です。焦点を当てている具体的な分子としては、細胞内の小胞体からゴルジ体にかけて局在する SNARE タンパク質 Syx5 とカルシウムポンプである SPCA です。様々なストレス刺激に応答して細胞内で起こる一連のストレス応答機構へのそれら分子の関与を明らかにすべく、分子生物学・生化学・生理学・免疫組織化学的手法をはじめ、蛍光イメージング、発光検出の手法も駆使して研究をしています。研究の詳細については、須賀の教員紹介のページをご覧ください。また大学院医学研究科・医学研究講義IIで簡単な研究紹介を行う予定ですので、そちらの講義を参考にしていただくことも可能です。研究に参加希望の方は医学部事務課・大学院係もしくは須賀あてにご連絡ください。

近年の主な業績

  1. Suga K, Yamamoto-Hijikata S, Terao Y, Akagawa K, Ushimaru M: Golgi stress induces upregulation of the ER-Golgi SNARE Syntaxin-5, altered βAPP processing, and Caspase-3-dependent apoptosis in NG108-15 cells. Mol Cell Neurosci., 121:103754 (2022)
  2. Yamamoto-Hijikata S, Suga K, Homareda H, Ushimaru M: Inhibition of the human secretory pathway Ca2+, Mn2+-ATPase1a by 1,3-thiazole derivatives. Biochem Biophys Res Commun., 614:56-62 (2022)
  3. Sakurai T, Fukutomi T, Yamamoto S, Nozaki N, Kizaki T: Physical Activity Attenuates the Obesity-Induced Dysregulated Expression of Brown Adipokines in Murine Interscapular Brown Adipose Tissue. Int. J. Mol. Sci., 22(19):10391 (2021)
  4. Takahashi T, Minami S, Tsuchiya Y, Tajima K, Sakai N, Suga K, Hisanaga S, Ohbayashi N, Fukuda M, Kawahara H: Cytoplasmic control of Rab family small GTPases through BAG6. EMBO Rep., e46794. (2019)
  5. Homareda H, Otsu M, Yamamoto S, Ushimaru M, Ito S1, Fukutomi T, Jo T, Eishi Y, Hara Y: A possible mechanism for low affinity of silkworm Na+/K+-ATPase for K. J Bioenerg Biomembr., 49(6): 463-472, (2017)
  6. Yamamoto S, Takehara M, Ushimaru M.: Inhibitory action of linoleamide and oleamide toward sarco/endoplasmic reticulum Ca2+-ATPase. Biochim Biophys Acta., 1861(1 Pt A):3399-3405 (2017)
  7. Yamamoto S, Takehara M, Kabashima Y, Fukutomi T, Ushimaru M: Identification of novel inhibitors of human SPCA2. Biochem Biophys Res Commun., 477(2):266-70 (2016)
  8. Yamamoto S, Kimura T, Tachiki T, Anzai N, Sakurai T, Ushimaru M.: The involvement of L-type amino acid transporters in theanine transport. Biosci Biotechnol Biochem., 76(12):2230-5 (2012)
  9. Yamamoto, S., Morihara, Y., Wakayama, M., and Tachiki, T.: Theanine production by coupled fermentation with energy transfer using γ-glutamylmethylamide synthetase of Methylovorus mays No. 9. Biosci Biotechnol Biochem., 72(5):1206-11 (2008)
  10. Yamamoto, S., Wakayama, M., and Tachiki, T.: Cloning and expression of Methylovorus mays No. 9 gene encoding γ-glutamylmethylamide synthetase: an enzyme usable for theanine formation by coupling with alcoholic fermentation system of baker’s yeast. Biosci. Biotechnol. Biochem., 72(1):101-109 (2008)