顕微解剖学教室では、主として顕微鏡レベルでの解剖学を扱っています。顕微解剖学教室の前身は解剖学第2講座で、平野 寛が初代教授として開設されました。その後、2000年より川上速人、2019年より秋元義弘、2024年より宮東昭彦に引継がれ現在の形になりました。
宮東は大学院共同研究施設 電子顕微鏡部門の部門長を兼務しています。
学部教育では、医学部2年生の組織解剖学および組織解剖学実習を担当しています。組織解剖学実習は、約2ヶ月間に100枚以上の組織標本を顕微鏡で観察していくハードな実習です。学生は顕微鏡で観察される構造をひとつひとつ確認し、教員と質疑応答を繰り返しながら、人体の構造と機能とを関連づけて整理していきます。
大学院教育では、顕微解剖学と組織細胞化学を担当しています。
近年の社会的活動には以下のようなものがあります。
この他にも、教室員は、所属する学会などの活動を通して社会貢献活動を行っています。
顕微解剖学教室は、大学院教育において顕微解剖学と組織細胞化学を担当しています。主たる研究テーマは、組織細胞化学的手法を用いた組織·細胞の機能的構造の解析です。光学顕微鏡(共焦点レーザー顕微鏡等)や電子顕微鏡レベルでのアプローチが中心になりますが、必要に応じて生化学的、分子生物学的手法も用います。実験材料としては全身のほとんどの器官を対象とし、正常組織だけでなく各種疾患(癌、糖尿病など)の組織や疾患モデル動物、発生異常なども扱います。免疫組織細胞化学、in situ hybridization、遺伝子導入などの手法を用いて、各種生体成分の局在と機能を解析します。大学院共同研究施設電子顕微鏡部門とも緊密に連携しています。
教育スタッフは3名で、次項に述べるような様々な研究テーマに沿って研究並びに大学院教育が行われています。それ以外にも、他の専門分野の大学院に籍を置いた院生や他教室の研究者が独自の研究テーマのもとで組織細胞化学的研究のために来訪する例も多く、そのための様々なサポート体制もとられています。また、他大学、他研究機関との共同研究も活発に行われています。
創設以来、当教室での研究成果を基にして学位を取得した研究者は学内外含めて100名以上に及びます。
研究プロジェクトは、各教員が中心となり、糖タンパクや糖脂質などを構成する糖鎖や糖転移酵素、ホルモンやその受容体などの情報を担う分子、発生過程での制御に関わる因子などを対象とした具体的な研究課題を設定して解析を行っています。
組織学の教科書に挙げられている細胞種の多くは、その形態的特徴にもとづいて分類されていますが、近年の研究により、細胞種は性質や機能の異なるサブタイプにさらに分類できることがわかってきました。私たちは、こうした細胞の多様性が健康と疾患にどう関与するか、とくにサブタイプの「分布」と「機能」の関係に注目しています。
その一つとして、大腸の内腔を覆うムチン層の形成を担う〈杯細胞〉に着目しています。ムチン層は組織の保護や腸内細菌叢の形成に重要です。その主要成分である糖鎖の種類は大腸に沿って連続的に変化し、この空間的パターンがムチン層のはたらきに不可欠です。しかし、その形成機構は不明でした。
私たちは、杯細胞のサブタイプであるdeep crypt secretory(DCS)細胞が関与していることを見出しました。杯細胞との違いは注目されてきませんでしたが、私たちが明らかにしたDCSの分布と産生する糖鎖の特徴は、DCSが独自の役割を持つことを示しています。とくにDCSが大腸に沿って勾配状に分布することは、糖鎖パターンの形成を通じ、ムチン層のはたらきと密接に関係すると考えられました。この知見は、ムチン層が関わる微生物学・免疫学・栄養学などの広範な分野においても、新たな理解をもたらすことが期待されます。
さらに、DCSの分布や機能の異常が組織の保護や腸内細菌叢に与える影響についても研究を進めています。ムチン層の異常と疾患の関係の理解に新たな視点を提供できると考えています。(菅原)
細胞の核や細胞質の中では、タンパク質に1個だけ糖がつくことで働きが変わることがあります(O結合型β-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾)。 私たちはこの仕組みに注目し、膵臓や腎臓、脳などでどこに存在するかをしらべてきました。この修飾は血糖値の調節と関わる可能性があり、特に糖尿病との関連について研究を進めています。(秋元)
細胞の外側には、細胞を支えたり、働きを調整したりする細胞外マトリックスと呼ばれる「足場」のような構造があります。私たちはその中でも基底膜に注目し、コラーゲン分子やガレクチンといった成分が細胞の働きや病気の発生にどのように関わるかを、分子生物学的および組織細胞化学的手法で調べています。(秋元)
ニワトリやマウスの胚を用いて、皮膚や羽毛、鱗、毛などがどのように形成されるのかを研究しています。特に、ビタミンAの影響や、Homeobox遺伝子と呼ばれる発生に重要な遺伝子が、皮膚の形成にどのように関わるかを調べています。(秋元)
医療分野で注目されているプラズマ照射は、出血を抑えたり傷の治りを早めたりする効果が期待されています。プラズマ照射の低侵襲な止血効果と創傷治癒促進機構を電子顕微鏡で観察し、ガレクチンを指標として糖鎖修飾の変化を解析することで、プラズマ医療の安全性と有効性を形態学的に検証しています。(秋元)
精巣の精細管では、精子発生の進行を示す「精上皮周期」が精細管に沿って配列し、波状に繰り返される「精上皮の波」が観察されます。私達は、精上皮の波が男性ホルモンをはじめとする精巣内の液性因子によって調節され、その調節が加齢とともに変化することを、マウスを使って明らかにしました。調節が正常に行われるのに必要な要素は何かについて、追求しています。(宮東)