教室概要
放射線腫瘍学とは放射線治療を通して腫瘍を知る学問であり、あらゆる悪性腫瘍が対象となります。日常臨床では集学的治療の中で、根治治療から対症療法まで病状・病態に応じて放射線治療をどう活かせるのかを追求します。そのためには放射線治療に限らず、腫瘍診断学、内科および外科の臨床腫瘍学、緩和ケア、終末期医療などの幅広い知識と経験が必要になります。これらの知識を包括的に学び、習得するのが放射線腫瘍学です。
教育の特色
放射線治療は手術、化学療法と並んで、がん治療の3本柱ですが、日本では十分に活用されているとは言えません。高齢者のがんが増え、侵襲の少ない放射線治療の重要性は高まっています。需要の多い領域ではありますが、放射線治療の専門医は不足しており、人材の育成は最重要課題と考えています。我々は医学生や研修医への教育を積極的に行います。
社会的活動
地域がん診療連携拠点病院として各医療機関からの患者を積極的に受け入れています。また、放射線治療の啓発・普及のための講演活動に協力しています。
研究テーマ
- 高精度治療による腫瘍制御の改善と正常組織への影響の軽減
- 寡分割照射(回数の少ない治療)の有効性に関する検討
2019年度に治療機器を大幅に更新したことに伴い、高精度放射線治療への対応能力が高まりました。これらを最大限に活用し、侵襲の少ない治療を開発しています。同時に寡分割照射を積極的に推進しています。これにより高い治療効果、通院の負担軽減などにつながるものと考えます。また、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)、JROSG(日本放射線腫瘍学研究機構)、NRG oncology(米国国立がん研究所(NCI)傘下の多施設共同試験グループ)などの国内外の臨床試験に参加しています。
大学院では放射線腫瘍学に関わる研究を幅広く行うことが可能です。当院のリニアックおよび周辺機器を用いた物理実験や臨床データを用いた研究などがテーマとなります。
2019年度に治療装置が大幅に更新されたことに伴い、治療の高精度化を進めています。同時に動体ファントムや様々な線量測定器、治療計画装置を導入しております。特に日々の照射時の線量を評価するシステム(EPIgray)では、実際に投与された放射線量を評価することができます。これらのシステムを利用し、治療効果および治療精度に関する研究を進めます。当院の治療設備に関しては教室ホームページ(http://kyorinrad.jp/)をご覧ください。
また、他施設での研究になりますが、重粒子線を用いた研究や放射線生物学に関する基礎研究も対象となります。
興味のある方はご相談下さい。
近年の主な業績
- 江原威,鹿間直人,木場律子,高橋健夫,茂松直之:一般市民における緩和ケアおよび放射線治療の認知度とニーズ -がん経験の有無による検討-.癌の臨床.66(4),261-267.2022.
- Yoshida D, Kusunoki T, Takayama Y, Kusano Y, Minohara S, Kano K, Anno W, Tsuchida K, Takakusagi Y, Mizoguchi N, Serizawa I, Ebara T, Katoh H: Comparison of Dose Distribution Between VMAT-SBRT and Scanning Carbon-ion Radiotherapy for Early-stage NSCLC. Anticancer Res 41(9):4571-4575, 2021.
- Okano N, Kubo N, Yamaguchi K, Kouno S, Miyasaka Y, Mizukami T, Shirai K, Saitoh JI, Ebara T, Kawamura H, Maeno T, Ohno T: Efficacy and Safety of Carbon-Ion Radiotherapy for Stage I Non-Small Cell Lung Cancer with Coexisting Interstitial Lung Disease. Cancers (Basel). 2021.
- Miyasaka Y, Komatsu S, Abe T, Kubo N, Okano N, Shibuya K, Shirai K, Kawamura H, Saitoh J, Ebara T, Ohno T: Comparison of Oncologic Outcomes between Carbon Ion Radiotherapy and Stereotactic Body Radiotherapy for Early-Stage Non-Small Cell Lung Cancer. Cancers 6;13(2):176, 2021.
- Ebara T, Ando K, Eishima J, Suzuki M, Kawakami T, Horikoshi H, Tamaki Y: Radiation with concomitant superselective intra-arterial cisplatin infusion for maxillary sinus squamous cell carcinoma. Jpn J Radiol 37(6):494-499, 2019.
日本語の解説・書籍など
- 江原威:7-89血管腫・動静脈奇形.がん・放射線療法改定第8版.大西 洋,唐澤久美子,西尾禎治,石川 仁 編集.秀潤社Gakken.2023.1323-1326.
- 江原威(翻訳):22章分子イメージ誘導放射線治療.臨床放射線生物学の基礎原著5版 日本語翻訳版.安藤興一,髙橋昭久,中野隆史,古澤佳也 監訳.特定非営利活動法人放射線医療国際協力機構.2022.279-299.
当教室の詳細は放射線腫瘍学HP http://kyorinrad.jp/ をご覧ください。