准教授 |
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リハビリテーション医学は近現代以降に確立された比較的新しい医学の分野です。当教室の創設は2001年7月、診療科として完全に独立したのが年11月と、まだその歴史は若く、発展途上にあります。
リハビリテーション医学は単独の組織や臓器に囚われることなく、広い視野から人間の心身機能、日常の活動、社会参加という、いわゆる生活機能を評価し、問題点の解決を図るための実学です。その根底は”dismobility(動けなくなること)”への対応にあり、筋骨格系の障害に加え、運動麻痺や感覚障害、小脳失調症などによる運動制御の問題、心肺系などの内部障害による運動制限、さらには高次脳機能障害による運動・行為の異常を専門に扱います。疾患としては脳卒中、脳腫瘍、脳・脊髄損傷、神経筋疾患、切断を含む骨関節疾患、脳性麻痺を中心とした発達障害などが主な対象になります。
臨床研究としては、脳卒中患者における身体機能の回復や歩行能力の獲得、日常生活動作の自立に資するためのデータベースの構築などに取り組んでいます。特に脳卒中センターにおける活動は、急性期リハビリテーションとして全国的に評価されています。基礎研究の分野では運動学に基づく神経生理に焦点をあて、再生医療や宇宙医学研究の分野にまで幅広く関わっているほか、世界保健機関(WHO)が推奨する国際生活機能分類の普及促進へ向けた活動にも携わっています。
脳卒中の発症超急性期から回復期リハビリテーションのゴールを見通して積極的介入を行うプログラムを考案し、効果の医療統計学的検証を進めています。
筋力の増強に加えて心肺機能を高めるための”concurrent training”をどのように効果的に行っていくのかを実践的に考えています。有人宇宙開発分野における重力と廃用の関係も研究テーマの一つです。
TACSは、頭皮上に貼った電極から弱い交流電流を脳に加える治療法で非侵襲的脳刺激法に分類されます。運動ニューロンの活動を直接高める、機能訓練の学習効率や定着を改善させる、といった効果が期待されています。
脳卒中の急性期から亜急性期に認められるPusher症候群は、麻痺していない側の手足を突っ張って、麻痺側に自ら倒れようとしてしまう姿勢調節障害です。
循環器内科との共同研究で、肺高血圧症を中心とする循環器疾患患者への心臓リハビリテーションの効果について研究を進めています。
脊髄損傷後の急性期・亜急性期では神経前駆細胞の移植単独による運動機能回復が得られますが、慢性期になると移植単独では効果が得られなくなります。しかしここでリハビリテーションを加えることで、運動によって分泌されてくる神経栄養因子や無秩序に再生してくる新生線維の再編を通じて有意な機能回復が認められてきます。臨床応用へ向けて、詳しい機序の検討や薬剤を加えたさらなる併用療法の効果などを研究しています。
ChatGPTに代表される大規模言語モデルのリハビリテーションへの応用について研究を行っています。