大学ホーム医学研究科教育・研究指導研究室・研究グループ感染症学教室

研究室・研究グループ紹介:感染症学教室

本研究室では感染症の原因となる細菌、ウイルス、真菌、寄生虫を対象とした病原性発現メカニズムの解析をはじめとする基礎医学的研究を行っています。本研究室は細菌、ウイルス、真菌を対象とする微生物学部門、寄生虫を対象とする寄生虫学部門に大別されて大学院教育が行われます。

微生物学部門

微生物学研究室の対象は細菌・ウイルス・真菌と幅広いですが、特に細菌の病原因子の解析を主体として細菌感染症の病態解析および発症メカニズムに関する研究を指導しています。以下に挙げる諸点に関する研究が現在進行しています。

ヘリコバクター・ピロリ感染と胃内および口腔内フローラとの関連性についての研究

胃炎、胃十二指腸潰瘍および胃癌の原因と想定されているヘリコバクター・ピロリは個体によって感染の形態および経過に違いが生じることが知られています。そこで、本菌感染においてヒトの口腔内および消化管に存在している正常細菌叢が大きな役割を果たしているという仮説のもとにスナネズミへの感染実験等により解析を行なっています。また、このような感染症に対するプロバイオティクスによる治療効果について検討を行なっています。

細菌バイオフィルム形成能と病原性の関連についての研究

ある種の細菌はバイオフィルムを形成して生体の免疫能を回避するとともに抗菌薬の作用から免れています。バイオフィルムは挿管表面などに形成される他、生体組織にも形成され、バイオフィルム感染症を引き起こします。ヘリコバクター・ピロリなどのバイオフィルム形成に関して解析すると共に、それらに影響をおよぼす因子について研究を行っています。バイオフィルム形成を調節する因子の解明はバイオフィルム感染症の治療の一助となることが期待されます。

百日咳菌の病原性発現制御機構の解明

百日咳菌感染症は小児の感染症として古くから知られてきましたが、近年、成人患者の割合が増加しています。また、ワクチンによって制御されてきたにもかかわらず現在世界的に増加傾向にあります。百日咳菌は多種多様な病原因子を産生しており、それらの発現はBvgASという二成分制御系により正に制御されています。本研究室ではこの二成分制御系に加え、変化に富んだ宿主内環境に応じた病原因子発現制御系を明らかにすることを目的として解析を行なっています。

マイコプラズマ・ニューモニエの病原因子に関する解析

マイコプラズマ・ニューモニエは小児や若年層に好発する原発性異型肺炎(マイコプラズマ肺炎)の起因菌ですが、他の細菌と異なり細胞壁を欠くため、感染症治療に繁用されているβ-ラクタム系抗菌薬が無効です。

本菌は著明な病原因子を保有しないことから、マイコプラズマ肺炎および続発する合併症の病因は宿主免疫応答による間接的組織傷害と考えられていますが、その病原機構に関しては未だ不明な部分が多く残されています。

当教室では常在微生物の影響を受けずに、宿主と病原体の関係について検討することが可能な無菌マウスを用いてマイコプラズマ肺炎モデルを樹立し、その病態についての検討を行っています。また肺炎マイコプラズマ菌体成分の炎症誘導能やリンパ球の細胞分化に及ぼす影響についての解析が行われており、本菌による感染症の発症病理の解明に向けて研究が進められています。

近年の業績

  1. Yonezawa H, Osaki T, Fukutomi T, Hanawa T, Kurata S, Zaman C, Hojo F, Kamiya S: Diversification of the AlpB outer membrane protein of Helicobacter pylori affects biofilm formation and cellular adhesion. J Bacteriol. 2017 Feb 28;199(6). pii: e00729-16. doi: 10.1128/JB.00729-16. Print 2017 March 15, PMID:28031283
  2. Hanawa T, Kamachi K, Yonezawa H, Fukutomi T, Kawakami H, Kamiya S. Glutamate Limitation, BvgAS Activation, and (p)ppGpp Regulate the Expression of the Bordetella pertussis Type 3 Secretion System. J Bacteriol. 2016. 2;198(2):343-51.
  3. Usui M, Suzuki K, Oka K, Miyamoto K, Takahashi M, Inamatsu T, Kamiya S, Tamura Y:Distribution and characterization of Clostridium difficile isolated from dogs in Japan. Anaerobe  37(1): 58-61, 2016
  4. Yonezawa H, Osaki T, Kamiya S:Biofilm formation by Helicobacter pylori and its involvement for antibiotic resistance. Biomed Res Int. 2015;2015:914791. Epub 2015 May 19. Review.
  5. Furuta Y, Konno M, Osaki T, Yonezawa H, Ishige T, Imai M, Shiwa Y, Shibata-Hatta M, Kanesaki Y, Yoshikawa H, Kamiya S, Kobayashi I. Microevolution of Virulence-Related Genes in Helicobacter pylori Familial Infection. PLoS One. 2015. 15;10(5):e0127197.
  6. Kurata S, Osaki T, Yonezawa H, Arae K, Taguchi H, Kamiya S, Role of IL-17A and IL-10 in the antigen induced inflammation model by Mycoplasma pneumoniae. BMC Microbiol. 2014. 13;14(1):156.
  7. Osaki T, Konno M, Yonezawa H, Hojo F, Zaman C, Takahashi M, Fujiwara S, Kamiya S. Analysis of intra-familial transmission of Helicobacter pylori in Japanese families. J Med Microbiol. 2015. 64(Pt 1):67-73.
  8. Yonezawa H, Osaki T, Hanawa T, Kurata S, Ochiai K, Kamiya S. Impact of Helicobacter pylori biofilm formation on clarithromycin susceptibility and generation of resistance mutations. PLoS One. 2013. 6;8(9):e73301.
  9. Hanawa T, Yonezawa H, Kawakami H, Kamiya S, Armstrong SK. Role of Bordetella pertussis RseA in the cell envelope stress response and adenylate cyclase toxin release. Pathog Dis. 2013. 69(1):7-20.
  10. Osaki T, Okuda M, Ueda J, Konno M, Yonezawa H, Hojo F, Yagyu K, Lin Y, Fukuda Y, Kikuchi S, Kamiya S. Multilocus sequence typing of DNA from faecal specimens for the analysis of intra-familial transmission of Helicobacter pylori. J Med Microbiol. 2013. 62(Pt 5):761-5.

微生物学部門の詳細は、感染症学教室(微生物学)のページをご覧下さい。

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寄生虫学部門

寄生虫病研究の対象としては、マラリア原虫、赤痢アメーバなどの原虫類と、住血吸虫、フィラリア、回虫などの蠕虫類の他、外部寄生虫があります。当部門では、特に、エイズ、結核と並ぶ三大感染症の1つである“マラリア”の感染防御/免疫制御機構、病態発症/抑制機構、ワクチン候補抗原の探索に関する研究を行っています。

マラリア原虫の増殖・病原性に関わる因子の探索

近年、マラリア原虫の遺伝子改変が容易に行えるようになりました。この遺伝子改変技術を活用し、赤血球期のマラリア原虫の増殖・病原性に関わる因子の探索 および解析を行っています。マラリア原虫の増殖・病原性に関わる因子の解明は、効果的な新規抗マラリア薬/ワクチンの開発の一助となることが期待されます。

図1: 蛍光色素を導入したマラリア原虫. 赤;致死性株、緑;非致死性株、青;原虫の核)

ガンマデルタT細胞によるマラリア防御免疫機構の解明

ガンマデルタT細胞は自然免疫様リンパ球の1つとして生体防御に働いています。当研究室では、マラリア原虫感染の際に、ガンマデルタT細胞は抗原提示細胞の樹状細胞の活性化を促進することでマラリア防御免疫を助ける役割があることを世界に先駆けて明らかにしました。現在は、ガンマデルタT細胞が関わるマラリア防御免疫機構の全容を明らかにするため、その他の免疫細胞との相互関係や免疫細胞を供給する造血細胞などとの関連性についても解析をすすめています。

図2: マラリア原虫感染マウス脾臓中のガンマデルタT細胞(赤)と樹状細胞(緑). 青は細胞の核.)

マラリア原虫複合感染による病態重症化の抑制に関する研究

熱帯熱マラリアでは、適切な治療が施されなければ発熱から数日以内に脳症や急性肺傷害などを併発し、病態は急激に重症化します。一方で、良性の三日熱マラリア原虫が複合感染している場合、悪性の熱帯熱マラリア原虫単独感染と比較して重症化が抑制される傾向にあります。このマラリア原虫複合感染による重症化抑制機構を解明するために、マウスマラリア原虫の致死性株と非致死性株に赤色と緑色の蛍光色素をそれぞれ導入し、複合感染時の感染動態について解析し ています。

妊婦におけるマラリアの重症化機構の解明

マラリア浸淫地域の人々はマラリア原虫に対する免疫を獲得しており、マラリア原虫に感染しても重症化することは殆どありません。しかし、妊娠するとマラリア原虫に対する抵抗性が低下し、病態は重症化します。また、妊娠中のマラリアにより流産や死産、胎児の発育遅延が頻発します。マラリア原虫に感染した妊婦における病態重症化機構は未解明な部分が多いことから、妊婦における重症マラリアの病理学的・臨床的な特徴を再現するマウスモデルを作出し、その病態生理 について解析を行っています。

マラリア原虫の有性生殖期における分化発育・制御機構の解明

熱帯熱マラリア原虫の有性生殖体(ガメトサイト)は、ヒト体内で形成され、蚊への伝播に必須となる発育ステージです。ガメトサイトは極めて複雑な分化・発育過程をとるため、これまで詳細な分子・遺伝子解析ができませんでした。そこで、ガメトサイトの成熟度を様々な段階で制御できる画期的な化学成分既知培地を開発し、これを用いてガメトサイトの分化・発育を制御後、高精度の次世代シーケンサーを駆使してその成熟機構および無性生殖期から有性生殖期への転化機構を解析しています。

近年の業績

  1. Inoue S-I, Niikura M, Asahi H, Iwakura Y, Kawakami Y, Kobayashi F: Preferencially expanding Vγ1+ γδ T cells are associated with protective immunity against Plasmodium infection in mice. Eur J Immunol, 47(4): 685-691, 2017.
  2. Honma H, Niikura M, Kobayashi F, Horii T, Mita T, Endo H, Hirai M: Mutation tendency of mutator Plasmodium berghei with proofreading-deficient DNA polymerase delta. Sci Rep 6:36971, 2016. DOI:10.1038/srep36971.
  3. Asahi H, Kobayashi F, Niikura M, Inoue S-I, Yagita K, Tolba EM: Copper homeostasis for the developmental progression of intraerythrocytic malarial parasite. Cur Top Med Chem, 16: 1-10, 2016.
  4. Furusawa J-I, Mizoguchi I, Chiba Y, Hisada M, Kobayashi F, Yoshida H, Nakae S, Tshuchida A, Matsumoto T, Ema H, Mizuguchi J, Yoshimoto T: Promotion of expansion and differentiation of hematopoietic stem cells by interleukin-27 into myeloid progenitors to control infection in emergency myelopoiesis. PLoS Pathog, 12(3):e1005507, 2016 Mar 18.
  5. Suzuki S, Hikosaka K, Balogun EO, Komatsuya K, Niikura M, Kobayashi F, Takahashi K, Tanaka T, Nakajima M, Kita K: In vivo curative and protective potential of orally administrated 5-aminolevulinic acid plus ferrous iron against malaria. Antimicrob Agents Chemother, 59(11): 6960-6967, 2015.
  6. Inoue S-I, Niikura M, Inoue M, Mineo S, Kawakami Y, Uchida A, Ohnishi H, Kamiya S, Watanabe T, Kobayashi F: The protective effect of CD40 ligand-CD40 signaling is limited during the early phase of Plasmodium infection. FEBS Lett, 588(13): 2174-2153, 2014.
  7. Mineo S*, Niikura M*, Inoue S-I, Kuroda M, Kobayashi F: Development of severe pathology in immunized pregnant mice challenged with lethal malaria parasites. Infect Immun, 81(10): 3865-3871, 2013. (*equal contribution)
  8. Niikura M, Inoue S-I, Mineo S, Yamada Y, Kaneko I, Iwanaga S, Yuda M, Kobayashi F: Experimental cerebral malaria is suppressed by disruption of nucleoside transporter 1 but not purine nucleoside phosphorylase. Biochem Biophys Res Commun, 432 (3): 504-8, 2013.
  9. Inoue S-I, Niikura M, Mineo S, Kobayashi F: Roles of IFN-γ and γδ T cells in protective immunity against blood-stage malaria. Front Immunol, 4(258): 1-9, 2013. (doi: 10.3389/fimmu.2013.00258)
  10. Inoue S-I, Niikura M, Takeo S, Mineo S, Kawakami Y, Uchida A, Kamiya S, Kobayashi F: Enhancement of dendritic cell activation via CD40 ligand-expressing γδ T cells is responsible for protective immunity to Plasmodium parasites. Proc Natl Acad Sci U S A, 109 (30): 12129-12134, 2012.

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寄生虫学部門の詳細は、感染症学教室(寄生虫学)のページをご覧下さい。

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