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Faculty of Medicine救急医学教室

教室専任教員

付属病院・三鷹キャンパス

教授
准教授
講師
助教

教室概要

救急医学教室とは

救急医学・医療は世界的に大きな転換期を迎えています。米国では、「外傷外科の黄金時代」を支えていた都市部の銃創や刺創等の外傷が減少し、社会的ニーズが縮小し、一方、わが国でも新臨床研修制度での救急必修化にともない、OSCEなどの成人教育の専門家が台頭し、従来の救急医はidentity crisisを起こしています。

これまでわが国の救急医学・医療を常に牽引していく役割を果たしてきたと自負しております杏林大学高度救命救急センターは、このように変貌する環境の中、次の目標を掲げて新たな挑戦に挑んでいます。

診療

1. 高度化と普遍化

従来の初期、二次、三次という枠組みに戦略的再編を施し、「どこにもまねできない超高度先進救急医療」と、「どこもがまねしたがるER型救急医療」との二極化を図ります。

2. 地政戦略

救急医療の社会医学的側面の認識を強め、地域の消防や医療機関、医師会、保健所との連携を強化し、ネットワーク化とポジショニングを図ります。

3. クオリティー・コントロール

診療指針、クリニカルパスの導入とともに権限と責任の範囲、委譲関係を明確にし、診療の質に関する内部統制を確立します。

教育

新臨床研修制度のなかで、ERで初期救急診療の基本的なトレーニングを施すのは、救急医学に課せられた責務ですが、指導者たる資質を兼ね備えたERの専門家はわが国には少ない。豊富な症例数を背景に、学生・研修医教育のみならず、ERにおける臨床教育の担い手(指導者)を養成し、全国に輩出したいと考えています。

教育の特色

臨床実習では机上で決して体感することができない、高度救命救急センターとして「最後の砦」を担う救急医の姿を目の当たりにしてもらうことが何よりの教材と確信しています。また、純粋に学問としての救急医学だけではなく、社会に対しての救急医療の提供体制の整備など様々な面で活動していることは他分野とは異なる魅力ある特色であり、そういった面も学んでもらいたいと考えております。

社会的活動

災害時の病院前救護活動であるDMATをはじめ、東京消防庁等の機関と共にシステム構築の画策や、国際的な大規模イベントの際の医療体制の構築など、救急医療の範囲は院内の診療行為に留まりません。当教室は先陣を切って社会に貢献できる新しい救急医療の形を常に模索しております。

研究の目的

救急医学が診療科としてのみならず、学問的にも認知され、地位を確立することが私たちの世代に課せられた課題です。高度救命救急センターの存在意義は、すでに確立された理論やガイドラインの忠実な遵守によりpreventable trauma deathを回避することにあらず。それを少しでも先に進めて、これまで救命し得なかった命を救うために果敢に挑戦することにあると心得ます。

研究・教育の方針

臨床経験を通じて発生する、様々な疑問点に対する個人の探究心を重視しています。疑問点を解明するための、あるいは新しい仮説を立てそれを証明するための具体的な戦略や、研究計画を立てられる人材を育てることを、大学院教育の目的とします。研究テーマに関しては、基礎研究・臨床研究いずれにしても結果が臨床に直結するもの、あるいは研究の目的が臨床応用に向かうものを重視しています。

研究活動の紹介

基礎研究のテーマ

  • キチン類スポンジ止血材による止血効果に関する研究(甲陽メディカルとの共同研究)

2年間の共同研究期間が終了し、研究成果を第37回日本救急医学会総会・学術集会にて報告しました。原著論文として杏林医学会誌に報告しています。

山田賢治、徳永尊彦、新倉保、黒住誠司、藤岡保範、樽井武彦、後藤英昭、松田剛明、島崎修次、山口芳裕 : ラット肝損傷モデルを用いたキチン類スポンジ止血材の止血効果に関する研究. 杏林医会誌44巻1号:3-11,2013.

  • 微小電図法による交感神経活動電位の導出(日本光電、第1解剖学教室との共同研究)

全く新しい手法の開発目的のため、杏林大学倫理委員会の承認を得て研究に着手しました。共同研究の成果を第37回日本救急医学会総会・学術集会、および第52回日本手外科学会学術集会にて報告しました。第1解剖学教室との共同研究(業績参照)、および日本光電との共同研究の研究について、杏林医学会誌に報告しました。

Miyauchi H, Yamada K, Goto H, Tarui T, Matsuda T, Shimazaki S, Yamaguchi Y. : Depiction of perivascular micro-action potentials by microneurography. 杏林医会誌43巻4号:85-92,2013.

  • 心肺蘇生中の心電図波形解析(徳島大学との共同研究)

3年間の研究成果を平成22年度「消防防災科学技術研究推進制度」研究報告会にて発表しました。現在も共同研究を継続中です。

  • 幹細胞を応用した培養皮膚による熱傷治療
  • 放射線被ばくや放射性核種による汚染を伴う外傷・熱傷の基礎診断と治療研究 (放射線医学総合研究所との共同研究)
  • 重症敗血症とサイトカイン
  • 救急医療とロボット工学とのコラボレーション
  • 集中治療領域の感染症と腸内細菌
  • NBC災害安全対策
  • 臨床研究のテーマ

    • 敗血症患者に対する新しい薬剤治療の臨床応用
    • 熱傷患者に対する大量輸液時の輸液剤(HLS,Vit.C)による体液管理の差異
    • 広範囲熱傷における手の機能再獲得に向けた治療法の確立
    • 四肢切断(Major limb amputation)傷病者に対する再接着術
    • キチン類スポンジ止血材の出血に対する止血性能確認
    • 体温異常における凝固能異常およびエネルギー代謝異常
    • 救急疾患の季節変動の疫学調査

    3年間に亘って収集したデータを調査し、年度毎に臨床救急医学会総会にて発表しました。この成果をまとめて臨床救急医学会誌に報告しています。

    久保田慎吾、山田賢治、小笠原英昭、亀ヶ谷利生、塩野目淑、樽井武彦、後藤英昭、松田剛明、島崎修次、 山口芳裕:救急疾患の季節および日内変動に関する調査・報告.日本臨床救急医学会雑誌15巻5号:668-678,2012.

    教室では、「熱傷」「敗血症」「外傷」「ショック」などを主たる研究テーマに 掲げています。ここで挙げているテーマ以外にも様々な研究テーマに着手しております。

近年の主な業績

  1. Kaita Y1,Otsu A1,Tanaka Y1,Yoshikawa K1,Matsuda T1,Yamaguchi Y11Department of Trauma and Critical Care Medicine Kyorin University School of Medicine):Epidemiology of bloodstream infections and surface swab cultures in burn patients.Acute Med Surg.9(1).752.2022.
  2. Mochida Y1,Nishizawa R1,Ochiai K1,Inoue Y2,Kaita Y1,Yamaguchi Y11Department of Trauma and Critical Care Medicine Kyorin University School of Medicine,2Department of Paramedics Kyorin University School of Health Sciences):Delayed tension gastrothorax caused necrosis of stomach and re-expansion pulmonary edema: a case report.Surg Case Rep.8(1).100.2022.
  3. Ochiai K1,Mochida Y1,Nagase T2,Fukuhara H3,Yamaguchi Y1,Nagase M41Department of Trauma and Critical Care Medicine Kyorin University School of Medicine,2Department of Urology, Kyorin University School of Medicine,3Kunitachi Aoyagien Tachikawa Geriatric Health Services Facility,4Department of Anatomy, Kyorin University School of Medicine):Upregulation of Piezo2 in the mesangial, renin, and perivascular mesenchymal cells of the kidney of Dahl salt-sensitive hypertensive rats and its reversal by esaxerenone.Hypertens Res.46(5).1234-1246.2023.
  4. Mochida Y, Ochiai K, Nagase T, Nonomura K, Akimoto Y, Fukuhara H, Sakai T, Matsumura G, Yamaguchi Y, Nagase M. Piezo2 expression and its alteration by mechanical forces in mouse mesangial cells and renin-producing cells. Sci Rep 12,4197,2022.
  5. Nishimura H,Mochida Y,Ogino S,Fukushi K1,Yamazaki H1,Miyakuni Y,Kaita Y,Minamishima T1,Soejima K1,Yamaguchi Y(1Department of Cardiovascular Medicine, Kyorin University Hospital):Critical anterior mediastinal hematoma without internal mammary artery injury caused by cardiopulmonary resuscitation: A case report.Trauma Case Rep.23.37.2021.DOI: 10.1016/j.tcr.2021.100587.
  6. Kaita Y,Nishimura H, Tanaka Y, Suzuki J, Yoshikawa K, Yamaguchi Y:Effect of acute coagulopathy before fluid administration in mortality for burned patients.Burns.S0305-4179(20)30559-3.2020.DOI:10.1016/j.burns.2020.10.011.
  7. Kato S,Yamaguchi Y,Kawachi I11 Harvard T.H. Chan School of Public Health):Assessment of community vulnerability and medical surge capacity in a foreseeable major disaster.PLOS ONE.15(7).2020.DOI:10.1371/journal.pone.0235425.
  8. Mochida Y,Miyakuni Y,Kaita Y,Yamaguchi Y:Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta for ruptured pancreaticoduodenal artery aneurysm.Clin Case Rep.9(2).686-688.2020
  9. Miyakuni Y,Nakajima M1,Kaszynski RH1,Tarui T,Goto H1,Yamaguchi Y(1Tokyo Metropolitan Hiroo Hospital):A Case Involving Massive Insulin Overdose: Direct and Indirect Conditions Requiring Extended Management of Serum Potassium.Am J Case Rep,2020.DOI:10.12659/AJCR.920078
  10. Kaita Y,Tarui T,Tanaka Y,Suzuki J,Yoshikawa K,Yamaguchi Y:Reevaluation for prognostic value of prognostic burn index in severe burn patients.Acute Med Surg  7(1):499-503,2020

日本語の解説・書籍など

  1. 荻野聡之,山口芳裕(分担執筆):質量分析装置による薬毒物検査.医学のあゆみ.医歯薬出版.2021.996-1001.
  2. 海田賢彦,山口芳裕(分担執筆):Ⅳ外傷・熱傷の診断・治療 44.熱傷患者の管理指針.救急・集中治療 最新ガイドライン2022-’23.岡本和文編著.総合医学社.2022.159-160.
  3. 海田賢彦(分担執筆):熱傷創に対する感染対策の進歩.医学のあゆみ.医歯薬出版.2022.1227-1230.