杏林大学医学部のカリキュラムは、カリキュラムポリシーに基づき、豊かな人間性の涵養および医師に求められる専門的知識と技能の修得、さらには医学の発展に対応しうる総合的判断能力の育成を目的として、諸科目を有機的に配置しています。
各学年のそれぞれの講義科目の学習の到達目標・年間講義予定などの詳細は「シラバス(pdfファイル)」でご覧いただけます。
以下に、平成31年度(2019年度)入学生から開始される新カリキュラムの概要を示します。
杏林大学医学部のカリキュラムは、カリキュラムポリシーにのっとり、豊かな人間性の涵養および医師に求められる専門的知識と技能の修得、さらには医学の発展に対応しうる総合的判断能力の育成を目的として、諸科目を有機的に配置しています。以下に、その概要を示します。
高校時代に学習した物理、生物、化学などの基礎科学の知識を発展させ、医学物理学、生物学、代謝生化学、生体化学、医学統計学など、医学にかかわる科学の基礎知識を学習します。
また、同時に、医師に求められる基本的姿勢および知識を学びます。とくに「行動科学Ⅰ」、「生命倫理と医療安全」などの講義や、全学部共通授業、病院体験学習、地域体験学習、OSCE患者体験の4つのプログラムで構成される「早期体験学習Ⅰ」を通して、社会が医師に求める姿勢・態度、そして患者から期待される医師像や医療のあり方を学習し、医学生として相応しい価値観や態度を身につけます。
病院体験学習(early clinical exposure)は、病院の診療科での見学を中心とした体験学習です。病院における医師の役割を理解するとともに、医学生としての自覚を新たにします。地域体験学習は、地域の福祉施設などで地域福祉の実態を体験し、その体験を踏まえ、地域福祉の現状や課題について、講義やグループ学習をおこないます。グループ学習の成果は、学内報告会を通して、課題解決の方法について学びます。OSCE患者体験は、患者の立場や感情について体験的に学ぶと同時に、将来求められる医学生としての能力を理解します。
チュートリアルは、「与えられた課題からその背後に存在する問題、追求すべき問題点を見出し、必要な情報・資料を検索しつつ、解決に至る道筋を自ら見出す能力を育成する」ことを目的としたカリキュラムです。将来、医療の現場で様々な問題に遭遇した際、日々進歩する膨大な医学知識の中から適切な情報を抽出し、直面する問題を解決してゆくための方策を学びます。
基礎医学については、分子生物学と肉眼解剖学の講義が始まります。人体の構造の理解を目指す解剖学や生命の根源にせまる分子生物学を学習することから、医学の基本的知識習得の第一歩を踏み出すことになります。
英語によるコミュニケーション能力は、医師はもとより、国際化の進んだ現代の社会人には、将来の活躍する世界を広げるために不可欠です。その重要性に鑑み、英語・医学英語Iでは、学生を能力別に30人前後の小グループに分け、それぞれの実力に合った演習型の講義を行います。
2022年度から全学部共通の教養科目が開設されました。このうち、「保健・医療の現状と未来Ⅰ」は必修科目ですが、他学部が開講する社会学科目「社会学I~III」が自由選択科目として設置されています。これら人文社会学系の学問についても学びは、人間としての幅を広げ、良き医師となるための契機となります。
医師となるための、また生涯学び続けるための土台となる基礎医学の科目(肉眼解剖学、組織解剖学、統合生理学、病態生理学、細胞生物学、感染症・免疫学)を学びます。講義と同時に実習が行われます。これらの科目は『人体の構造と機能』を理解する上できわめて重要で、臨床医学を学んでからも、その重要性を再認識することが多い科目です。
「行動科学II」、「早期体験学習II」などの講義や体験学習を通して、人間の行動を理解し、望ましい行動変容を促すための方策を学びます。「行動科学II」では、医療安全、カウンセリング、言語とコミュニケーション、医療と多様性、患者視点などについて学習します。「早期体験学習II」は、身体診察入門、地域体験学習、病院体験学習の3つのプログラムで構成されます。ここでは、身体診察に必要となる基本的な技能の習得と、地域の福祉施設や病院での体験学習を通して、医学生としての自覚を高めます。
英語・医学英語IIは、学生を能力別に30人前後の小グループに分け、それぞれの実力に合った演習型の講義を行います。
基礎医学の科目として、薬理学、病理学A・Bを学びます。これらの科目は、すでに学んだ人体の構造と機能の上にさらに「病態」の要素が加わったもので、その知識や考え方は、医師として薬剤の作用機序や患者の病態機序などを考えるための基礎となります。この他に、衛生学で、人間の集団を対象とした疾病の予防、健康の保持・増進の方策を学習します。
臨床医学の科目(臨床医学総論、臨床検査医学・輸血学、消化器内科学、消化器外科学、循環器病学A・B、呼吸器内科学、内分泌・代謝内科学、神経内科学・脳卒中医学、血液内科学、腎臓内科学、呼吸器・甲状腺・乳腺外科学、産科婦人科学、小児科学、精神神経科学、泌尿器科学、皮膚科・形成外科学)の講義も開始されます。臨床系科目は、関連する科目の壁を越えて適切なテーマと講義担当者を配置している統合型(例えば、循環器内科学と心臓血管外科学を中心とした循環器病学)となっています。
身体診察入門、地域・病院体験学習の2つのプログラムで構成される「早期体験学習III」では、第4学年から開始される臨床実習につながる技能、態度を身につけます。
英語・医学英語IIIでは、少人数で英文医学論文の講読を行うスモールグループ学習が行われます。
臨床医学の科目(和漢医学概論、法医学、高齢医学、リウマチ膠原病学、小児外科学、救急医学、脳神経外科学・脳卒中医学、整形外科・リハビリテーション医学、眼科学、耳鼻咽喉科学、放射線医学・放射線腫瘍学、麻酔科学、腫瘍学、感染症学、生活習慣病学)の講義が行われます。
後期から始まる臨床実習に備え、診断能力と基本的な臨床技能を身につけるための「臨床診断学講義および実習」が行われます。実習は小グループで、様々な臨床技能のテーマを順に回って行われます。
第4学年のチュートリアルは、臨床医学的な内容を課題として行われます。これまでに身につけた医学知識を、患者の問題解決に向けてどのように応用していくかを学びます。
後期から開始される、臨床実習(Bed Side Learning, BSL)に先だって、これまでに学んだ基礎、臨床、社会医学の知識と基本的な臨床技能に関して、全国共通で行われる共用試験(コンピュータ試験CBTと基本的臨床技能試験OSCE)による評価を受けます。共用試験に合格することは臨床実習履修のための要件です。共用試験に合格し、臨床実習を許可された学生には、白衣式において白衣とStudent Doctorの認定証が授与されます。
BSLは、これまでに修得した医学知識を、実地臨床に応用する能力の育成が目的であり、ほぼ1年間にわたって小グループで各診療科を順次回って行われます。医学生が、実際の患者に対する最初の機会であり、臨床医としての姿勢の基本がこの時点で形成されるといっても過言ではありません。
BSLにおいては、ひとたび院内感染が発生すると患者のみならず病院機能に甚大な影響を与えることから、感染防御の徹底は臨床実習において不可欠な姿勢です。そのため、必要に応じシミュレーション教育を行うことで、感染防御策の習得を目指します。
少人数のグループ学習と英文医学論文の講読を行うスモールグループ学習を行う英語・医学英語IVのほかに、さらに高度な英語力を身につけたいと希望する学生や、第6学年で海外でのクリニカルクラークシップ実習を希望する学生等を対象にした英語・医学英語Ⅴを選択科目として設定しています。
臨床実習が主体となります。診療科巡回型のBSLの後に、学生の診療参加型実習をさらに発展させたクリニカルクラークシップが取り入れられています。クリニカルクラークシップにおいては、自らが担当する患者の担当医になったつもりで病歴を聴取し、課題を解決するための検討を行います。また、この場は、これまでに修得した全ての医学知識を応用する場です。
臨床実習における感染防御策の習得も肝要であり、そのために必要なシミュレーション教育を行います。
最終学年は、卒業に向けて全科目の総仕上げと、卒後臨床研修への円滑な導入のための準備に当てられます。医学部で学んだ膨大な知識を整理する期間です。
6年間に学習した医学知識の総まとめとなる「臨床総合演習」が行われます。総合試験Ⅰ期が終了すると、クリニカルクラークシップが、学内もしくは学外(海外を含む)の医療機関2箇所で4週間ずつ行われます。
クリニカルクラークシップの後、「臨床総合演習」と並行して、公衆衛生学の講義が行われます。公衆衛生学では、社会集団の健康維持と増進および生活の質の向上を目指すための様々な方策を学びます。