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形成外科学とは、顔面、手など体の表面における先天異常の治療から、外傷、熱傷および瘢痕拘縮、ケロイド、顔面神経麻痺など後天的な変形に対する治療、また乳癌切除後の乳房再建など腫瘍摘出後の再建術にいたるまで、幅広い領域をカバーする学問です。さらに美容外科は人間の美を追究する医学であり、アンチエイジングとして医学的見地からアプローチを行っていく分野でもあります。このような幅広い分野に対応するためには形成外科の一般的な技術だけでなく、マイクロサージャリーやクラニオフェイシャルサージェリーといった特殊な技術と経験が要求されます。杏林大学形成外科では、総勢20名を超える都内随一を誇るスタッフが、それぞれの専門分野を活かしながら、患者さんにとって最適な治療法を選択して診療に当たっています。
当教室の多久嶋教授は陳旧性顔面神経麻痺治療の世界的第一人者であり、全国から治療を求めて患者が集まってきています。遊離広背筋移植術を代表とする「笑い」の再建から、眼瞼や眉毛の下垂や頬部の下垂などに対するリフティングの手術も行っており、より自然な表情を取り戻すために最適な治療法を提供しています。また積極的に新しい治療法の開発や顔面表情筋運動の客観的評価方法の開発もすすめております。
外傷や腫瘍切除後に大きな組織欠損を生じる場合には、大きな組織移植が必要となります。この移植を行うにはマイクロサージャリーによる微小血管吻合が不可欠であり、一般に血管柄付き遊離組織移植術と呼ばれています。当教室の多久嶋教授は、豊富な経験と実績で多くの施設から再建を依頼されています。また血管吻合の難易度が高い切断指再接着術においても、積極的に対応しマイクロサージャリーを用いた手術成績の向上に努めています。
近年、乳癌患者が増加しており、それに伴って術後の乳房変形に悩まれる患者が増えています。当教室では、侵襲の少ない乳房インプラントを用いた再建から脂肪移植、自家組織を用いた再建まで、乳房再建専門グループが積極的に行っています。縮小手術が盛んになるにつれ、乳房変形の度合いは小さくなりますが、その修正は逆に難しくなります。乳房形成術として有用な術式の開発をすすめています。また、乳房再建患者に対する満足度や整容性に関する研究、乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫に関する基礎研究も行っております。
形成外科では顔面・頭部の骨組織も治療の対象としています。外傷では鼻骨骨折や頬骨骨折などの単純な顔面骨折から多発顔面骨折にいたるまで幅広く対応しています。またクルーゾン病やアペール症候群などの先天異常に対する骨切り手術(クラニオフェイシャルサージャリー)も当教室の専門グループが担当しています。困難な顔面骨骨折の治療や頭蓋顔面変形に対して、新しい術式や器具の開発を行っております。
一般に血管腫と呼ばれる「乳児血管腫(苺状血管腫)」から治療に難渋する「血管奇形」まで、幅広く対応しています。先進的治療である硬化療法も積極的に施行しており、治療成績と安全性の向上に努めています。血管奇形に対する治療はいまだ十分に確立されていないため、基礎研究も積極的に行っています。現在は硬化療法をより広く、一般化するための研究を行っております。
糖尿病や動脈疾患に伴う下腿潰瘍は一般に難治性潰瘍と呼ばれ、治療が非常に難しい疾患群の一つです。当教室では潰瘍の治療を多角的アプローチで行っており、良好な治療成績をおさめています。特に高圧酸素療法や陰圧閉鎖療法などの保存的治療も積極的に行っています。下肢切断を避けるために、創傷治癒の基礎的研究を中心に、臨床への応用も積極的に行っています。