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Faculty of Medicineリハビリテーション医学教室

教室専任教員

教授
講師
助教

教室概要

リハビリテーション医学は近現代以降に確立された比較的新しい医学の分野です。当教室の創設は平成13年7月、診療科として完全に独立したのが平成14年11月と、まだその歴史は若く、発展途上にあります。

リハビリテーション医学は単独の組織や臓器に囚われることなく、広い視野から人間の心身機能、日常の活動、社会参加という、いわゆる生活機能を評価し、問題点の解決を図るための実学です。その根底は”dismobility(動けなくなること)”への対応にあり、筋骨格系の障害に加え、運動麻痺や感覚障害、小脳失調症などによる運動制御の問題、心肺系などの内部障害による運動制限、さらには高次脳機能障害による運動・行為の異常を専門に扱います。疾患としては脳卒中、脳腫瘍、脳・脊髄損傷、神経筋疾患、切断を含む骨関節疾患、脳性麻痺を中心とした発達障害などが主な対象になります。

臨床研究としては、脳卒中患者における身体機能の回復や歩行能力の獲得、日常生活動作の自立に資するためのデータベースの構築などに取り組んでいます。特に脳卒中センターにおける活動は、急性期リハビリテーションとして全国的に評価されています。基礎研究の分野では運動学に基づく神経生理に焦点をあて、再生医療や宇宙医学研究の分野にまで幅広く関わっているほか、世界保健機関(WHO)が推奨する国際生活機能分類の普及促進へ向けた活動にも携わっています。

教育の特色

  • リハビリテーション医療における治療手段について、論理的背景の考証、科学的な視点からの効果検証をもとに、すべての臨床に役立つ実践的応用を横断的に網羅します。リハビリテーションの効果を論理的に説明できることを目指します。
  • 国際生活機能分類の理念を理解し、実践できる医療者の育成を目指しています。WHOの動向と直結した、最先端の情報を提供します。
  • 人とのかかわりを第一とし、地域でのこころの通う医療を実践できる、そして国家レベルの施策への関与し、世界に羽ばたき、宇宙にまで興味の幅を広げられるよう、リハビリテーション医学の魅力を伝えます。

社会的活動

  • リハビリテーション医学会の諸委員会や厚労省・文科省の委員会、さらには国立研究開発法人やWHOの活動等にも人的に貢献しています。
  • 日本人宇宙飛行士の運動指導、飛行後リハビリテーションに関わっています。また、世界の宇宙機関と協力し、宇宙医学をベースとした教育プログラムの普及に携わっています。

研究テーマ

リハビリテーションのアウトカムスタディ

脳卒中の発症超急性期から回復期リハビリテーションのゴールを見通して積極的介入を行うプログラムを考案し、効果の医療統計学的検証を進めています。

廃用症候群

筋力の増強に加えて心肺機能を高めるための”concurrent training”をどのように効果的に行っていくのかを実践的に考えています。有人宇宙開発分野における重力と廃用の関係も研究テーマの一つです。

経頭蓋交流電気刺激(TACS)の脳卒中機能回復に与える影響

TACSは、頭皮上に貼った電極から弱い交流電流を脳に加える治療法で非侵襲的脳刺激法に分類されます。運動ニューロンの活動を直接高める、機能訓練の学習効率や定着を改善させる、といった効果が期待されています。

外来心臓リハビリテーションの効果

循環器内科との共同研究で、肺高血圧症を中心とする循環器疾患患者への心臓リハビリテーションの効果について研究を進めています。

脊髄損傷モデル動物に対する神経前駆細胞移植とリハビリテーション(慶應義塾大学との共同研究)

脊髄損傷後の急性期・亜急性期では神経前駆細胞の移植単独による運動機能回復が得られますが、慢性期になると移植単独では効果が得られなくなります。しかしここでリハビリテーションを加えることで、運動によって分泌されてくる神経栄養因子や無秩序に再生してくる新生線維の再編を通じて有意な機能回復が認められてきます。臨床応用へ向けて、詳しい機序の検討や薬剤を加えたさらなる併用療法の効果などを研究しています。

近年の主な業績

  1. Tashiro S, Tsuji O, …, Yamada S, Tsuji T, Okano H, Nakamura M: Current progress of rehabilitative strategies in stem cell therapy for spinal cord injury: a review. NPJ Regen Med. 2021 Nov 25;6(1):81. doi: 10.1038/s41536-021-00191-7.
  2. Matsuda K, Teruya K, Uemura O: Urodynamic effect of vibegron on neurogenic lower urinary tract dysfunction in individuals with spinal cord injury: A retrospective study. Spinal Cord 60 716-721, 2022.
  3. 山田深:長期宇宙滞在における運動とリハビリテーション.Precision Medicine 4, pp 824-827, 2021.
  4. Tashiro S, et al.: Probing EEG activity in the targeted cortex after focal transcranial electrical stimulation. Brain stimul. 13: 815-818, 2020.
  5. 山田深: 脳卒中急性期リハビリテーションの現状と課題. MEDICAL REHABILITATION 236: 17-21, 2019.
  6. 山田深: 宇宙飛行士の地球帰還後リハビリテーションの実際. 整形・災害外科62: 705-712, 2019.
  7. 山田深: ICF活用の実際と展望 WHOの動向(解説). 総合リハ47: 493-495, 2019.
  8. Tashiro S, et al.: Estimating nutrition intake status of community-dwelling elderly people requiring care in disaster settings: A preliminary cross-sectional survey. J Rehabil Med 51: 312-316, 2019.

日本語の解説・書籍など

  1. 山田深(分担執筆):第6章 脳血管障害.標準リハビリテーション医学第4版.医学書院,2023年,221−240.
  2. 田代祥一(分担執筆):再生医療とリハビリテーション.標準リハビリテーション医学第4版.医学書院,2023年,380−381.
  3. 山田深:医彩―PwC Healthcare Hub 第3回 極限に挑む医学―宇宙飛行とリハビリテーション.
    https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/healthcare-hub/interview03.html
  4. 山田深:ICFの改定・改正にかかわる最新の動向.The Japanese journal of rehabilitation medicine 59 (8): 769-774, 2022
  5. 田代祥一(分担執筆):リハビリテーションレジデントマニュアル第4版(脳卒中、末梢神経損傷、多発性神経炎、ポストポリオ症候群、複合性局所疼痛症候群、災害時のリハビリテーション医療).医学書院,2022年.