大学ホーム医学研究科教育・研究指導研究室・研究グループ法医学教室

研究室・研究グループ紹介:法医学教室

研究グループ及び研究課題

法医学教室は、法医剖検例で頻度が高い心臓突然死の診断に関連する心筋細胞の遺伝子汚及びタンパク質発現に関する研究、覚醒剤等の違法薬物が中枢神経系に与える影響、自殺例の脳における神経細胞の変化、損傷における組織線維化に関するメカニズムについて、形態的及び分子生物学的手法を用いて解析しています。また損傷が著しいご遺体の修復に関する研究を行って、ご遺族の悲嘆を少しでも緩和するような実用的である研究を続けています。さらに法医遺伝学、歯科的個人識別、法医診断や鑑定で必要な検査技術の基礎的な研究を行っています。

心臓突然死研究

法医解剖において、心臓に起因する突然死は、最も多く遭遇する死因の一つです。その中でも急性心筋梗塞の発症初期に死亡した場合では、心臓の心筋細胞に特徴的な変化をほとんど認めません。そのため、心臓への血流が途絶えた時に心筋細胞内で引き起こされる蛋白質の変化を解析する事で、急性心筋梗塞の発症初期に特徴的な変化を明らかにすることを目的としています。

違法薬物が脳へ与える影響の研究

危険薬物の種類は、年々増加しています。しかしながら、その種々の薬物に対して薬理作用を決定する基礎研究は膨大な時間が必要となります。そこで、刺激性薬物に対する生体の反応による変化をとらえる事で、詳細な基礎研究の結果が未完成な薬物であっても、基本的な薬理作用が同様であれば、刺激性薬物摂取の推定が可能と考えて、研究を行っています。

自殺の病理学的研究

自殺は、年間2万人以上ある大きな社会問題です。しかしながら、自殺を決定できる客観的な指標は確立されておりません。これまでに、一部の自殺事例等において、グルタミン作動性神経が過剰に刺激されていることが報告されています。そこで、法医解剖例において、自殺を決定づける客観的な指標を明らかにする為、免疫組織化学的、分子生物学的に検索しています。

組織線維化の制御因子に関する研究

組織線維化はその程度により、創傷治癒をはじめ様々な疾病に関わる現象です。その成り立ちを知ることはすなわち臓器損傷を知ることにほかならず、それは法医学における損傷の鑑定の根源的な問いでもあります。線維化のメカニズムはいくつか提唱されていますが、我々はパラコート肺の形成過程に着目してそのメカニズムを明らかにし、さらにその制御因子を探求することを目標としています。

シリコン素材を主体とする人工皮膚開発に関する研究

法医解剖では、損傷の激しいご遺体を扱うことが少なくありません。ご遺族の悲嘆を少しでも緩和する目的(グリーフケア)と、ご遺体からの滲出液や臭いの漏出などを防ぐ遺体衛生保全の観点から、解剖後のご遺体に適切な修復処置を施すことは極めて重要です。しかしながら、専門家による遺体修復に関する研究はほとんど行われていないのが現状です。よって本研究では、生前の損傷あるいは法医解剖に伴う処置により損なわれたご遺体の皮膚に対し、シリコン素材を主体とした人工皮膚を作成し、これを用いて可及的にご遺体の外観を生前の状態に修復することを目指しております。汎用性の高い人工皮膚の開発は、ご遺族および社会の法医解剖に対する抵抗感の軽減、ひいては剖検率の増加、公衆衛生への寄与が期待できると考えております。

大学院生の指導方針

興味があることを見出し、それについて探求する。それに際して、自分で考え、答えを導きだし、更に応用できることを目指す。

最近の大学院生の研究テーマの例

「ORP150 免疫染色を用いた法医診断への応用」

現在の大学院生数

0名

近年の主な業績

  1. Nara A, Nakajima R, Yamada C, Suyama M, Kozakai Y, Yoshida M, Iwahara K, Takagi T. Temperature and time after urine collection affect the detection of phenethylamine, a substance prohibited in sports. Drug Test Anal. 2023 Mar 3. doi: 10.1002/dta.3466.
  2. Yamada A, Kawase M, Matsumoto T, Demitsu T, Etoh T. Papular acantholytic dyskeratosis in a male patient localized to the anogenital area mimicking condyloma acuminatum. J Dermatol. 49(2). e57-e58. 2022. doi: 10.1111/1346-8138.16225.
  3. Yamada A, Unuma K, Arai N, Kitamura O, Uemura K. Inappropriate diet and fatal malnutrition in a 10-year-old child fed only infant formula throughout life: novel pathological diagnostic criterion for starvation via lipophagy. Forensic Sci Int. 325:110896. 2021. doi: 10.1016/j.forsciint.2021.110896.
  4. Yamada A, Takeichi T, Kiryu K, Takashino S, Yoshida M, Kitamura O. Fatalhuman herpes virus 6B myocarditis: postmortem diagnosis of HHV-6B based on CD134+ T-cell tropism. Legal Medicine (Tokyo). In Press. 2021.
  5. Yamada A, Demitsu T, Umemoto N, Kitamura O. Video image of genital melanosis provides strong evidence to support identification of a sexual offender. Forensic Sci Med Pathol. 17:510-512. 2021.
  6. Kinoshita H, Tanaka N, Yasumoto-Takakura A, Abe H, Maebashi K, Tsuboi A, Iwase H, Iwadate K, Osawa M, Kitamura O. Appropriate samples for helium detection in postmortem investigations. Leg Med (Tokyo). 47:101784. 2020.
  7. Takeichi T, Hori O, Hattori T, Kiryu K, Zuka M, Kitamura O:Pre-administration of low-dose methamphetamine enhances movement and neural activity after high-dose methamphetamine administration in the striatum. Neurosci Lett. 15;703:119-124. 2019.
  8. Kiryu K, Takeichi T, Kitamura O:An autopsy report of accidental burial in a beach sand hole. Leg Med (Tokyo). Nov;35: 88-90, 2018.
  9. 高篠智,宮木孝昌1, 2,氣賀澤秀明,廣川達也,吉田昌記,王璐,松村譲兒3,北村修(1東医大,2愛知医大,3杏林大・医・解剖学):両側性過長茎状突起の肉眼的及び組織学的検索.形態科学 20 (2):103-116,2017.
  10. Kigasawa H, 1Fujiwara M, 1Ishii J, 1Chiba T, 1Terado Y, 1Shimoyamada H, 1Mochizuki M, Kitamura O, 1Kamma H, 1Ohkura Y(1Department of Pathology, Kyorin University School of Medicine):Altered expression of cytokeratin 7 and CD117 in transitional mucosa adjacent to human colorectal cancer. Oncol Lett. 14 (1):119-126, 2017.
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