教室専任教員
付属病院・三鷹キャンパス
付属杉並病院
教室概要
呼吸器内科では、学部学生も研修医も「疑問や問題点を見出す」こと、そこを出発点とするProblem Oriented型の姿勢で臨みます。その解決プロセスから、Evidence Based Medicine (EBM)に立脚しつつ、患者一人一人の違いにも対応できる柔軟な姿勢を学びます。臨床においては、現場(病棟・外来)で考える(病院紹介参照)、研究発表においても、現場(学会・研究会)で討論することを重視しています。
2023年度学会参加実績は、国際学会はAmerican Thoracic Society (ATS)、European Respiratory Society (ERS)、Asian Pacific Society of Respirology (APSR)などで、国内学会も呼吸器学会、感染症学会、肺癌学会、アレルギー学会、内科学会、呼吸器内視鏡学会を主として参加しております。また地方会、研究会でも多数の報告・発表を行っています。
教育の特色
呼吸器内科は免疫・感染症・がん等多彩な疾患を診る幅広い領域です。各々の領域で日進月歩しつつある治療を理解するため、一つ一つの疾患における病態を丁寧に講義しています。胸部画像検査から病態を推測できるように画像所見の捉え方も実践を通して指導を行っています。さらに、検査所見にだけとらわれず診断を進めていくために、身体診察にも重点を置いて実習を行っています。
社会的活動
肺癌、慢性呼吸不全、喘息など患者の方々のQOL向上のため、地域医療機関と積極的に連携しています。また、地域の医家の方々、患者の皆さまとともに最先端の医学を勉強する機会を積極的に作り、高い医学水準での共通した診療目標を持つようにしております。
研究テーマ
総合診療グループ
当科では総合診療が医師の基本であるとの立場から、総合診療およびその教育に力を入れております。呼吸器病学にとらわれず、いわゆるcommon diseaseや胸部以外の症状にも興味を持って積極的に学んでおります。そのため、外部講師を招聘し勉強会を開催したり、総合診療の研究会に出席したりする機会を作っています。また成果も学会誌等に報告しております。
市中肺炎グループ
肺炎診療は、日本呼吸器学会「市中肺炎の診断・治療のガイドライン」「成人院内肺炎診療ガイドライン」に基づいた診療を行っています。さらに、患者さん一人一人の診察と観察から生じてくる市中肺炎の臨床的な問題点の抽出とデータの収集・解析、解決を行っています。それらを元に市中肺炎や慢性気道感染症の病態の解析を行っております。
びまん性肺疾患グループ
臨床では幅広くびまん性肺疾患を扱っています。胸部画像検査および病理組織を臨床情報と統合して臨床研究を進めています。研究では、肺胞蛋白症についての臨床データおよび血清および気管支肺胞洗浄液中の蛋白やサイトカインのデータを集めて研究を進めています。新潟大学やCincinnati大学との共同研究も行っています。
基礎研究ではサルコイドーシスの方の血液や気管支肺胞洗浄液の解析を行うことで発症機序や病態の解明を医学部の他の教室と共に研究を行っております。
肺癌グループ
当科の入院患者数の約半分が肺癌の患者さんです。分子標的薬を用いた治療も積極的に導入し、また、第Ⅱ相、Ⅲ相の臨床治験にも積極的に参加しています。治療効果の検討・化学療法の副作用の検討と対策などを幅広く研究し、日常臨床へのフィードバックを目指しております。これらの成果を各学会において積極的に外部に発信しております。
閉塞性肺疾患グループ
閉塞性肺疾患には、主として気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease (COPD)が含まれ、それぞれ最新のガイドラインやエビデンスに基づいて診療を行っており、その条件下における(リアルワールドでの)疫学的な臨床研究を行っています。基礎研究では、気道炎症の病態において上皮細胞を中心に据えて見つめ、動物実験も行い慢性気道炎症の機序に付いて研究を行っています。更に、非常にユニークな観点から、分子生物学的知見に基づくアプローチから疫学的介入まで幅広く試みています。
近年の主な業績
- Miyaoka C, Watanabe M, Nakamoto K, Yoshida Y, Hirata A, Aso J, Nunokawa H, Ishida M, Honda K, Takata S, Saraya T, Ishii H. Association of IL-33 in modeling type-2 airway inflammation and pulmonary emphysema in mice. Immun Inflamm Dis. 2024; 12(4): e1252. doi: 10.1002/iid3.1252.
- Shimoda M, Nunokawa H, Tanaka Y, Morimoto K, Moue I, Yoshimori K, Saraya T, Ohta K, Ishii H. Predictive factors of the presence of pulmonary embolism in patients with interstitial lung disease: Observational study. Medicine (Baltimore). 2024; 103(1): e36828. doi: 10.1097/MD.0000000000036828.
- Kobayashi F, Saraya T, Akizawa T, Abe T, Takagi R, Ieki E, Ishikawa N, Kurokawa N, Aso J, Nunokawa H, Nakamoto Y, Ishida M, Sada M, Nakamoto K, Takata S, Ishii H. Impact of Cough Severity on the Diagnostic Yield of Endobronchial Ultrasonography Transbronchial Biopsy with Guide Sheath: A Retrospective Observational Study. J Clin Med. 2024; 13(2): 347. doi: 10.3390/jcm13020347.
- Honda K, Saraya T, Ishii H. A Real-World Prognosis in Idiopathic Pulmonary Fibrosis: A Special Reference to the Role of Antifibrotic Agents for the Elderly. J Clin Med. 2023; 12(10): 3564. doi: 10.3390/jcm12103564
- Saraya T Sr, Ogawa Y, Nakamoto K, Fujiwara M, Ishii H. Pulmonary Involvement in Microscopic Polyangiitis: Computed Tomography Findings in 55 Patients With Analysis of Risk Factors for Recurrence. Cureus. 2022; 14(1): e21285. doi: 10.7759/cureus.21285.
- Saraya T, Ohkuma K, Fujiwara M, Ishii H. Diagnostic method for malignant pleural effusion distinguishing malignant mesothelioma from lung cancer using pleural carcinoembryonic antigen and hyaluronic acid levels. Medicine (Baltimore). 2022; 101(1): e28517. doi: 10.1097/MD.0000000000028517.
- Nakamoto K, Saraya T Sr, Kurai D, Fukukawa N, Taneoka T, Shimasaki T, Ishii H. Reusing N95 Respirators at Weekly Intervals During the COVID-19 Pandemic. Cureus. 2021; 13(2): e13542. doi: 10.7759/cureus.13542.
日本語の解説・書籍など
- 石田 学, 石井 晴之. 【ガイドラインから見るびまん性肺疾患診療の進歩】気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き 診断の進歩. 呼吸器内科. 2023; 44(3); p315-321.
- 麻生 純平, 石井 晴之. 【肺炎の最近の動向-感染症から特殊な肺炎まで】特発性間質性肺炎. カレントテラピー. 2022; 40(11); p1083-1088.
- 石井 晴之. 【びまん性肺疾患-病態・臨床の最新知見-】診断と治療 病理が特徴的で稀なびまん性肺疾患 続発性肺胞蛋白症. 日本臨床. 2022; 80(9); p1503-1508.
- 石井 晴之. 【今「すりガラス陰影」を見直そう】続発性肺胞蛋白症における胸部HRCTの意義. 臨床放射線. 2021; 66(3); p241-249.
- 石井晴之・小林史・編. 初めて握る人のための 気管支鏡入門マニュアル 改訂第2版. メジカルビュー社, 2021.