木内善太郎助教らが執筆した症例報告が、2023年2月24日に米国内分泌学会のオフィシャルジャーナルであるJCEM Case Reportsに掲載され、Featured Articleとして選ばれました。
この論文は、高副甲状腺ホルモン(PTH)血症を呈したBartter症候群患者においてEllsworth Howard試験を実施し、高PTH血症の原因が腎臓でのPTH抵抗性を惹起する偽性副甲状腺機能低下症Type IIであったことを診断しました。Bartter症候群ではプロスタグランジンE2(PGE2)が、その病態形成に関わっていることがすでに報告されており、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が治療に用いられる場合があります。筆者らは本症例にNSAIDsを使用しPGE2を抑制すると腎臓でのPTH抵抗性が改善され、高PTH血症が是正されることを報告しました。本症例では高Ca尿症や低身長も改善しました。Bartter症候群においてPGE2を抑制することで偽性副甲状腺機能低下症を改善させることができた初めての症例報告です。
このことは未だ十分には解明されていないBartter症候群のカルシウム・リン代謝についてとても貴重な報告となります。Bartter症候群では長期的な腎石灰化により腎機能障害が進行することが危惧されます。この症例報告によりさらに多くの知見が集積され、今後、腎機能に悪影響を来さない用量でNSAIDsを使用することでBartter症候群において高Ca尿症の是正による腎石灰化の予防も期待されます。
発表雑誌: | JCEM Case Reports, Volume 1, Issue 2, March 2023 (Published: 24 February 2023). |
論文タイトル: | Bartter Syndrome Type 1 Due to Novel SLC12A1 Mutations Associated With Pseudohypoparathyroidism Type II |
筆 者: | Zentaro Kiuchi1, Kandai Nozu2, Kunimasa Yan1,3, and Harald Jüppner4,5 (1.Department of Pediatrics, Kyorin University School of Medicine, Mitaka, Tokyo, Japan, 2.Department of Pediatrics, Kobe University Graduate School of Medicine, Kobe, Hyogo, Japan, 3.Department of Pediatrics, Kosei Hospital, Suginami, Tokyo, Japan, 4.Endocrine Unit, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA, 5.Pediatric Nephrology Unit, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA) |
DOI: | 10.1210/jcemcr/luad019 |