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Faculty of Medicineウイルスの再活性化を伴う重症薬疹 – 薬剤性過敏症症候群 – の
合併症・予後を予測する

水川 良子(皮膚科学教室 教授)

研究のハイライト
  • 重症薬疹である薬剤性過敏症候群の合併症、予後は発症早期にDDSスコアを用いることで予測することができる。
  • 今回の多施設共同研究において、重症感染合併症はすべてDDSスコアの高い重症および中等症群にみられ、全例が全身ステロイド治療症例であった。
  • DDSスコアが高く重症群に含まれ、ステロイド治療群では致死に至る重症感染症を生じるリスクが高く、注意を要する。
  • DIHS/DRESSに対するステロイドパルス療法は、自己免疫疾患発症のリスク因子となる。

概要

 重症の薬剤アレルギー反応 (薬疹) は様々な合併症を生じるだけでなく、時に致死に至ります。なかでも、薬剤性過敏症症候群 (drug-induced hypersensitivity syndrome/ drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms: DIHS/DRESS)は、皮疹、発熱、リンパ節腫脹、肝障害など、経過中に様々な臓器に病変を生ずる重症薬疹の一型です。これらの臨床症状及び検査値異常が原因薬剤中止後も数回繰り返されることが特徴で、ヒトヘルペスウイルス6型(human herpes virus 6: HHV-6)に加え、他のヘルペスウイルスの再活性化を連続的に認めることがその原因とされています。なかでも、サイトメガロウィルス (cytomegalovirus : CMV) の再活性化は様々な感染合併症に関与し、また、持続的なHHV-6やEBウイルス感染が回復後に生じる自己免疫疾患発症に関わっていることが知られています。これらの合併症を早期から予測することができれば、予後を改善することができると考えられます。そこで、これらの合併症を予測するための予測スコア (DIHS/DRESS severity sore: DDSスコア)を私たちは提唱してきました (表) (Mizukawa et al., J Am Acad Dermatol. 2019; 80: 670)。DDSスコアは一般的な臨床情報のみでスコアリングできる臨床スコアで、本スコアにより症例を軽症、中等症および重症に層別化することが可能です。今回は、杏林大学での検討に加え、他の大学を加えた計5施設での検討を行いました。
 本研究では48症例が対象で、感染合併症 は6例、自己免疫疾患は5例発症し、死亡は4例でした。発症から3日以内の急性期にDDSスコアによるスコアリングを行うと、軽症 12例、中等症19例、重症17例に症例は層別化されました。群ごとの合併症や予後をみてみると、軽症群では合併症の発生はなく全例が回復していました。一方、重症合併症である感染症はすべてステロイド治療を要した中等症および重症群に含まれており、DIHS/DRESS発症早期にDDSスコアを用いることで合併症の有無や予後を予測することが可能でした (図)。感染合併症と深い関わりのあるCMV再活性化は軽症群ではみられませんでした。一方、死亡4例のうち3例は抗CMV治療が行われておらず、1例は抗CMV治療の開始がウイルス再活性化から1ヶ月後であり、適切なCMV治療はDIHS/DRESSの予後を改善させうる可能性が示唆されました。また、ステロイド無効の重症薬疹の治療選択肢であるステロイドパルス療法は、DIHS/DRESS回復期以降に発症する自己免疫疾患のリスク因子であることも明らかになりました。
 以上より本研究では、重症薬疹のひとつであるDIHS/DRESSの合併症や予後が早期に予測できることに加え、DIHS/DRESSに対する治療が合併症のリスク因子にもなり得ることを明らかにした点において、実臨床に結びつく有用な結果であると考えられます。今回の検討を踏まえ、より適切な治療を明らかにし提唱することが期待されています。

薬剤性過敏症症候群 重症度判定スコア
図

掲載論文
発表雑誌:The Journal of Allergy and Clinical Immunology : In Practice [ Vol.11(10), pp3169 –3178.e7, (2023) ]
論文タイトル:Drug-induced hypersensitivity/ drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms: Predictive score and outcomes
筆 者:Yoshiko Mizukawa1, Natsumi Hama2, Fumi Miyagawa3, Hayato Takahashi4, Youichi Ogawa5, Maiko Kurata1, Hideo Asada3, Riichiro Abe2, Tetsuo Shiohara1
(1.杏林大学 医学部皮膚科学教室 2.新潟大学 大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野 3.奈良県立医科大学 皮膚科学教室 4.慶應大学 医学部皮膚科学教室 5.山梨大学 医学部皮膚科学講座)
DOI: 10.1016/j.jaip.2023.06.065

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