慢性腎臓病 (CKD) は関節リウマチ患者における頻度の高い併存症です。CKDはそれ自体が炎症性の病態を呈し、また使用できる薬剤が制限されるため、関節リウマチの治療成績に影響する可能性があります。腎機能障害のある関節リウマチ患者では分子標的治療薬がよく用いられますが、これらの薬剤の治療成績にCKDが影響するかはよく分かっていませんでした。
そこで救急総合診療科 (腎臓リウマチ膠原病内科) の福井助教らは米国の大規模レジストリーを解析し、CKDのないリウマチ患者に比べて、CKDのある患者では、分子標的治療を行っても疾患活動性がより高く経過し、寛解率が約30%低下していることを示しました。また因果媒介分析により、この関連が他の治療薬の中止だけでは説明がつかず、CKDと治療成績が悪いことのより直接的な関連が示唆されました。
この結果はCKDのある関節リウマチ患者における個別治療の必要性を示唆するだけでなく、腎機能保護が慢性炎症性疾患の治療予後を改善させるという新たなコンセプトにつながる重要なエビデンスとなります。
これは福井 翔 助教 、救急総合診療科の松田 剛明 教授、腎臓・リウマチ膠原病内科の岸本 暢將 教授、駒形 嘉紀 教授、Harvard大学のDaniel Solomon教授らの共同研究であり、4月22日付けでリウマチ膠原病領域のLeading journalであるThe Lancet Rheumatology(ランセット・リウマチ学)に掲載されました。
福井 翔 助教のコメント:
杏林大学海外特別研究制度を用いてHarvard大学 Brigham and Women’s Hospitalに留学をさせていただきました。
留学中は疫学や統計解析の研鑽を行いつつ、質の高い研究を行うことを目標に研究を続け、日米の複数の研究成果を良いジャーナルに掲載する機会を得ることができました。臨床や教育だけでなく、疫学や統計にも強い人材を目指して引き続き精進し、学んだことを生かして杏林大学に貢献できればと考えています。
この場をお借りして、松田理事長およびご支援いただいた皆様に心からの感謝を申し上げます。
| 発表雑誌: | The Lancet Rheumatology (2026) |
| 論文タイトル: | Effectiveness and persistence of biological and targeted synthetic treatment in patients with rheumatoid arthritis and chronic kidney disease: a multicentre, prospective cohort study |
| 筆 者: | Sho Fukui, Hilde S Ørbo, Sara K Tedeschi, Zeynep S Tuzun, Hongshu Guan, Leslie R Harrold, Heather J Litman, Tomohiro Shinozaki, Mitsumasa Kishimoto, Yoshinori Komagata, Takeaki Matsuda, Wolfgang C Winkelmayer, Daniel H Solomon |
| DOI: | 10.1016/S2665-9913(26)00046-9 |