教室概要
小児外科は、新生児から思春期までの小児を対象として、消化器疾患を中心に、呼吸器、泌尿生殖器、体表疾患などに対する外科的治療を行う診療分野です。先天性疾患、新生児外科、小児救急、鏡視下手術、排便機能障害、移行期医療など幅広い領域を対象としており、成長・発達を踏まえた長期的視点に立った診療を特徴としています。
当教室は1973年、多摩地区における唯一の大学病院小児外科として診療を開始し、1994年には杏林大学医学部小児外科学講座として発展しました。現在は、日本外科学会認定施設、日本小児外科学会認定施設、総合周産期母子医療センターとして、地域における高度小児外科医療の中心的役割を担っています。
新生児外科領域では、総合周産期母子医療センターと密接に連携し、出生直後から外科的治療を必要とする重症新生児に対して迅速かつ高度な医療を提供しています。臍帯ヘルニア、腹壁破裂、先天性横隔膜ヘルニア、胎便性腹膜炎などの新生児疾患に対して、NICUと協力しながら周術期管理を行っています。
また、多摩地域の小児救急医療にも積極的に取り組み、急性腹症や外傷など緊急手術を要する症例にも24時間体制で対応しています。地域医療機関との連携を重視し、地域の小児外科医療を支える最後の砦としての役割を果たしています。
さらに、低侵襲治療としての鏡視下手術を積極的に導入し、患者さんの身体的負担軽減や整容性にも配慮した治療を行っています。ヒルシュスプルング病や虫垂炎など多くの小児外科疾患に対して鏡視下手術を実施し、安全性と低侵襲性の両立を目指しています。
近年では、“子どものための便秘症外来”を開設し、小児慢性便秘症に対する専門診療にも力を注いでいます。医師のみならず、看護師、薬剤師、栄養士など多職種と連携しながら、患児および家族を支える包括的医療を実践しています。また、小児期のみならず、疾患によっては成人移行期までを見据えた継続的診療を行っていることも当教室の特色の一つです。
教育面では、教育面では、卒後2年間の研修医を対象とした前期臨床研修プログラムと、小児外科専門医取得を目指す後期臨床研修プログラムを整備し、次世代の小児外科医育成に力を注いでいます。
当教室は、地域医療への貢献と次世代小児外科医の育成を使命とし、臨床・教育・研究の三本柱を通じて、小児外科医療のさらなる発展に取り組んでいます。
教育の特色
当教室では、長年にわたり蓄積された診療経験を基盤として、新生児から乳幼児、学童期、さらに成人移行期に至るまでの幅広い小児外科疾患について教育を行っています。
学生教育では、単なる見学にとどまらず、担当症例を通じて診断、周術期管理、手術治療、退院後フォローまでを一貫して学ぶ診療参加型教育を重視しています。小児外科特有の繊細な手術手技や、成長・発達を考慮した治療戦略を実際の診療現場で体感することで、臨床医として必要な思考力と判断力を養います。
また、難易度の高い手術症例においては、術前カンファレンスを通じて綿密な術前評価と治療計画立案を行っており、病態理解のみならず、チーム医療や多職種連携の重要性についても学ぶことができます。
総合周産期母子医療センターとして、新生児集中治療室(NICU)との密接な連携による周術期管理や、小児救急医療への対応など、大学病院ならではの高度医療を経験できる点も当教室の大きな特色です。
さらに、教室内外での症例検討会、学会発表、論文作成指導を積極的に行い、臨床のみならず研究マインドを持った小児外科医の育成を目指しています。専門医取得後も継続的に研鑽できる環境を整え、それぞれのキャリア形成を支援しています。
他施設から当科見学を希望される学生・研修医につきましては、杏林大学医学部事務課教務係までお問い合わせください。
社会的活動
当教室では、地域医療機関との連携や市民講座を通じて、小児外科疾患や小児便秘症に関する啓発活動を行っています。また、学会活動、教育セミナー、ガイドライン作成などにも積極的に参加し、小児外科医療の発展に貢献しています。
(以下、現在の社会的活動一覧を掲載)
渡邉佳子
- 「意外に知らない子どもの便秘」三鷹ネットワーク大学(2016年9月10日)
- 「知ってスッキリ!子どもの便秘」三鷹市民講座(2017年2月15日)
- 子どもの便秘症を診る.便秘について考える会,オンライン(2020年9月15日)
- 小児便秘症の診断と治療.Tama EC Seminar,オンライン(2020年10月15日)
- 子どもの便秘症を診る.便秘について考える会,オンライン(2021年2月5日)
- 小児便秘症の診断と治療.モビコール配合内容剤HD新発売記念講演会,オンライン(2023年1月12日)
- 子どもの便秘症を診る.三鷹市薬剤師会勉強会,オンライン(2023年2月15日)
- 子どもの便秘症を診る.第2回便秘について考える会,八王子市・オンライン(2023年3月28日)
- 子どもの便秘症を診る.小児消化器疾患Web講演会,オンライン(2023年5月17日)
- 小児の便秘―診断と治療―.東大阪医療センタースクラム会,オンライン(2023年6月24日)
- 子どもの便秘症を診る.調布市母子保健事業講演会,調布市(2024年2月14日)
- 子どもの便秘症を診る.多摩小児科懇話会,オンライン(2025年10月22日)
- 小児便秘症の診断と治療.小児科医のための便秘ネットフォーラム,オンライン(2026年1月22日)
加藤源俊
- 皆さんと作るリンパ管疾患のこれから. 第4回小児リンパ管疾患シンポジウム, ウェビナー(2023年1月22日)
- リンパで繋がろう!リンパ管疾患のこれから. 第5回小児リンパ管疾患シンポジウム, 国立成育医療研究センター(2023年1月22日)
- お医者さんの頭の中をのぞいてみよう. 第6回小児リンパ管疾患シンポジウム, 慶應義塾大学病院(2026年3月8日)
研究テーマ
当教室では、基礎研究と臨床研究の双方から、小児外科疾患の病態解明と治療成績向上を目指しています。特にヒルシュスプルング病を中心とした腸管神経系疾患や、小児慢性便秘症に関する研究、リンパ管奇形に関する研究に取り組んでいます。
ヒルシュスプルング病腸管における糖脂質の分布
ヒルシュスプルング病では、腸管内神経節細胞の遊走や分化が停止あるいは抑制されている可能性が示唆されています。当教室では、正常腸管およびヒルシュスプルング病腸管における糖脂質の分布を解析し、その病態解明を目指しています。
ヒルシュスプルング病腸管におけるHPC-1/syntaxinの局在
ヒルシュスプルング病の病変部腸管では、正常腸管と比較して過剰な神経線維増生が認められます。当教室では、神経発芽制御に関与するHPC-1/syntaxin蛋白の局在を解析し、異常神経形成との関連を研究しています。
小児慢性機能性便秘症の臨床研究
付属病院では、“子どものための便秘症外来”を開設し、小児慢性便秘症に対する専門診療を行っています。多職種連携を含めた診療体制のもと、診療データを用いた臨床研究を進め、エビデンスの構築と治療成績向上を目指しています。
リンパ管腫内皮細胞とその異常発現遺伝子解析
リンパ管腫は小児期にみられることの多い、リンパ管の形成異常とされています。内皮細胞内のPIK3CA変異などが原因とされていますが、未だ分子メカニズムは明確になっておらず、この探索を行っています。
近年の主な業績
- 渡邉佳子,浮山越史,金森洋樹:小児慢性便秘症に対するマクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウム(モビコール)の有効性及び安全性の検討 後ろ向き研究.日本小児外科学会雑誌.61巻2号:147-157,2025
- 渡邉佳子,浮山越史:【異物の診断と治療】消化管異物の診断・治療のアルゴリズム.小児外科.57:588-592,2025
- 渡邉佳子,浮山越史:【小児外科疾患の発生を考える】卵黄腸管遺残・尿膜管遺残.小児外科.57:828-831,2025
- 渡邉佳子,浮山越史:【極・超低出生体重児の治療戦略】極低出生体重児の仙尾部奇形腫.小児外科.57:91-93,2024
- 渡邉佳子:【乳幼児健診でよくある疑問・相談への対応】頭・筋骨格 臍 「でべそ」「おへそが赤い」.小児科.65:1284-1287,2024
- 渡邉佳子:【おなかが痛い、気持ちわるい 子どもの腹部疾患】内科的疾患 便秘.小児看護46:153-156、2023.
- 浮山越史、渡邉佳子:【小腸疾患-診断・治療の最新動向-】腸閉塞 腸重積症 日本臨床80:333-337、2022.
- 渡邉佳子、浮山越史:【小児の便秘:最近の知見】多職種連携による便秘症外来 小児外科54:406-411、2022.
- 渡邉佳子、浮山越史:【診断困難な小児外科症例:早期診断へのポイントとヒント】腸回転異常を伴わない新生児小腸捻転症 小児外科54:1066-1069、2022.
- Yoshiko Watanabe, Etsuji Ukiyama, Nobutsugu Abe, et al: Extraction of buried and covered foreign body in esophagus using endoscopic submucosal dissection devices. Pediatrics International,62:401-402,2020
- 渡邉佳子、浮山越史、阿部陽友:新生児期から症状があった舌根部嚢胞の3例.日本小児外科学会雑誌.56(6).1010−1015.2020
- 加藤源俊:総排泄腔遺残症の術後遠隔期における問題とDSDセンターの意義.小児外科57:1179-1182,2025.
- 加藤源俊:リンパ管腫(リンパ管奇形).小児外科54:78-81,2022.
- 加藤源俊:小児急性虫垂炎における画像診断の有用性.日本小児放射線学会雑誌35:72-77,2019.
- 加藤源俊:病態評価のための新しいスコアリング 胆道閉鎖症自己肝線維化スコア.小児外科50:42-45,2018
- 加藤源俊:腎移植を要した鰓弓耳腎症候群の2例.小児外科50:141-143,2018.
- 加藤源俊:リンパ管疾患に対する基礎研究.小児外科48:1241-1246,2016.
日本語の解説・書籍など
- 浮山越史、渡邉佳子【教科書にない小児外科疾患の最新情報―国内外の文献・ガイドラインカラー】腸重積症(解説)小児外科56巻6号:574-577.2024
- 渡邉佳子【日常生活に活かせる 専門外来の知識とテクニック】便秘 子どもの便秘外来(解説) 小児科65巻2号:123-130.2024
- 渡邉佳子【周産期医学必修知識(第9版)】胃破裂(解説)周産期医学51巻増刊:814-816.2021
- 渡邉佳子【私の処方2021】肝・消化器疾患の処方 胃食道逆流症 診断と治療のポイント(解説)小児科臨床74巻増刊:1764-1767.2021
- 浮山越史、渡邉佳子、阿部陽友【改めて認識する小児急性腹症治療に対する外科医の役割】小児急性腹症 総論(解説) 日本外科学会雑誌121:492-496、2020