大学ホーム医学研究科教育・研究指導研究室・研究グループ脳卒中医学教室

研究室・研究グループ紹介:脳卒中医学教室

脳卒中に特化した脳・神経疾患の臨床系教室です。脳卒中には、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」、脳血管が詰まる「脳梗塞」があり、包括的な知識が求められます。超高齢社会を迎え日本の国民病として重要性を増している脳卒中をテーマに以下のような臨床研究を行っています。

研究分野

1. 脳梗塞急性期の脳組織評価に基づく治療法の開発

脳主幹動脈閉塞症例に対する機械的血栓回収療法は、現在のスタンダード治療となっています。最長24時間まで適応があると言われますが、患者さんごとに治療に許された時間は異なります(Time Every Brain)。6時間以降でも治療できるslow progressorをいかに救うか、一方でfast progressorを救うべく迅速な治療を行うか、脳組織評価に基づいたtailor made therapyを開発しています。

2. 次世代薬を用いた脳梗塞急性期血栓溶解療法の開発(T-FLAVOR)

現在、rt-PA静注療法に用いているアルテプラーゼは血栓親和性、投与法、出血リスクについての課題が残されています。改良型rt-PA製剤であるtenecteplaseはボーラス投与が可能でアルテプラーゼよりも閉塞血管を再開通させる効果が高いことが報告されています。AMEDからの資金を得て杏林大学と国立循環器病研究センターを基幹施設とする多施設共同研究を実施しています。

3. 脳梗塞に対する抗血栓療法の最適化に関する研究

脳梗塞の病態に応じた抗血栓療法(抗血小板療法、抗凝固療法)の選択は、予防の重要な柱です。注射薬・内服薬、抗血小板療法の併用/単剤、ビタミンK拮抗薬/非ビタミンK拮抗薬(DOAC)の使い分けについて、血小板凝集能検査を用いた薬剤選択、凝固・線溶マーカー、神経超音波検査、脳血流検査などを用いて病態を解析し、最適な薬剤選択とその効果検証を行っています。

4. 遺伝性脳卒中に関する臨床研究

単一遺伝子異常により発症する脳小血管病(CADASIL、CARASILなど)に関するデータベース構築と臨床情報の解析を行っています。

実施中の臨床研究(多施設共同試験を含む)

杏林大学医学部脳卒中医学教室では臨床研究に力を入れており、国内外の施設とも協力して情報発信に努めています。以下に代表的なものを紹介します。

1. 急性期脳卒中に対する新規薬物療法 [FASTEST]

発症直後の脳出血に対する第VII因子製剤の有効性を確認する国際共同研究です。脳出血の新しい治療法の開発であり、当院も参加しています。

2. 脳梗塞急性期患者におけるCT灌流画像を用いた国際共同レジストリー研究 [INSPIRE-Japan]

虚血コアとペナンブラの評価は治療選択に重要な役割を果たします。急性期灌流画像の国際レポジトリ研究であるINSPIREは、私たちと関連の深い豪州のMark Parsons教授が研究主任です。灌流画像の評価は患者個々で異なる治療時間枠の判断に欠かせないものであり、このリポジトリから現場にフィードバックできる知見を多く得ています。

3. がんと脳卒中を合併する症例に関する研究 [Stroke Oncology]

日本脳卒中学会で2020年に組織されたStroke Oncologyに関するプロジェクトチーム(PT)です。塩川名誉教授(脳神経外科)、平野教授、河野講師(PT座長)がメンバーとして活動しています。2022年には日本がんサポーティブケア学会にStroke Oncologyワーキンググループが設立され、両学会で協力し活動を行っています。がんと脳卒中はともに頻度の高い国民病ですが、治療の進歩により余命が延長しています。しかし、がん・脳卒中各々の治療者はお互いの最新知見を把握しておらず、両疾患が並存する患者において適切な治療が行われていない懸念があります。この問題をSTROKE 2020で取り上げたところ反響は大きく、継続した調査研究に発展しました。

4. 脳梗塞急性期に対する遠隔コンディショニング研究 [RICAIS研究]

東京女子医科大学北川教授を主任研究者とする研究です。脳梗塞に対し、まったく新しい視点での治療法により機能予後を改善できるのか、研究が始まっています。

5. CADASIL患者に対する脳虚血イベント再発抑制研究 [LOMCAD]

京都府立医科大学尾原先生を主任研究者とする研究です。CASASIL患者を対象とし、ロメリジン塩酸塩による脳虚血イベント再発抑制ができるか、検証が行われています。

6. 虚血性脳血管障害における可溶性C型レクチン様受容体2に関する研究[CLECSTRO]

山梨大学井上教授、山王メディカルセンター内山教授を主任研究者とする可溶性C型レクチン様受容体2の値が脳梗塞やその重症度などと関連するか調査が始まっています。新しいバイオマーカーが診断や治療に有用かどうか検証される予定です。

近年の主たる業績

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