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耳鼻咽喉科学教室

教室スタッフ

教授 甲能 直幸
准教授 唐帆 健浩 横井 秀格 今西 順久
講師 増田 正次 池田 哲也 小柏 靖直
助教 蔵口 潤 佐藤 哲也 茂呂 順久
  佐藤 大

耳鼻咽喉科学教室は、開講以来すでに30年が過ぎました。この間、救急医療も含めた地域医療に貢献するとともに、教育、最新医療の研究にも尽力してきました。診療、研究では頭頸部癌治療、聴覚蝸牛系基礎研究、めまい平衡機能障害の診断・治療、中耳・耳管疾患の診断・治療、鼻副鼻腔疾患、気管食道疾患や嚥下障害など幅広い分野を対象とし、また、医学部学生・大学院生の教育にも力を注ぎ、特に大学院生においては、臨床の実力を十分備えさせた上で研究面でも本人の独創性を生かす指導を行っています。

頭頸部癌は、ものを食べる、言葉を話すなどの人として生活していく上で欠かすことの出来ない大切な機能を司る部分に生じる癌であるため、治療後にどれだけ機能を残せるかが非常に重要な課題です。当教室では放射線化学療法、機能温存手術といった生命予後を犠牲にしないで機能を維持するような治療の開発を積極的に進めており、大きな成果をあげています。また、癌の浸潤や遠隔転移を抑制することを目指して基礎・臨床を含めた多くの研究が盛んに行われています。めまい・難聴などの内耳性疾患、顔面神経麻痺では、必要に応じて、前者ではENG検査などのめまい検査を後者では顔面筋の筋電図モニターを行って病変部位診断や予後診断を行うとともに、症状が治まるように積極的に治療をしています。慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎では、耳管機能を念頭において換気不全も良くする鼓室形成術を施行することでより根治的に治療し、最近増加傾向にある耳管開放症や耳管狭窄症では耳管機能を詳細に把握した上で、耳管鼓膜チューブ挿入術など耳管形成の最先端の手術治療の臨床研究をしています。鼻副鼻腔疾患では、当教室において伝統的に行われてきた手術法に内視鏡手技を取り入れることでより洗練された内視鏡下の副鼻腔手術や難治性アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術を周辺病院よりの紹介で積極的に行っていますし、今後、鼻副鼻腔・頭蓋底外科や難治性の好酸球性慢性副鼻腔炎の治療研究を積極的に行います。東京都西地区でメインとなる救急医療においては、呼吸困難患者で喉頭など耳鼻咽喉科領域に原因がある場合に対応しています。また、平成21年7月から当院に開設された摂食嚥下センターは、当教室が中心となって運営しています。

当教室では日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の資格を入局者全員が取得するような基礎教育を今後さらに充実していきます。専門医資格の取得にあたっては学会発表、論文執筆を積極的に行うことが求められますが、これについても責任ある指導を行う体制をとります。

また、甲能教授(日本気管食道科学会元理事長)は、日本頭頸部外科学会理事長、太平洋外科系学会日本支部理事長を勤めており、外科系学会活動に教室をあげて積極的に取り組んでいます。



研究グループ及び研究課題

頭頸部癌に対する腫瘍生物学的研究

甲能直幸主任教授の指導のもと、癌の転移を教室の中心テーマとして基礎・臨床両方から研究を進めています。
頭頸部癌におけるリンパ節転移の状態を知るための最も可能性の高い手法として放射性同位元素をマーカーとしたセンチネルリンパ節生検(SNNS)があります。当教室では10年前よりSNNSに関する臨床研究を行っており、現在では第Ⅲ相臨床試験が行われています。このSNNSをさらに発展させて、放射性同位源を用いない新たな手法を編み出すことに成功し、動物実験を経て臨床試験を開始しています。リンパ節転移に影響を及ぼす腫瘍生物学的因子の解明も進めています。一方、化学療法に関する臨床研究も盛んに行っており、頭頸部癌治療の大きな柱である放射線化学療法、あるいは化学療法単独投与における、さらに有効性が高く安全なregimen開発にも積極的に取り組んでいます。
癌治療の基礎研究では、臨床に近い実験系である固形癌腫瘍モデルである多細胞スフェロイド(multicellular tumor spheroids; MTS)を頭頸部癌細胞で作成し、抗癌剤の効果が薬剤の腫瘍内深達性に強く関与し、抗癌剤の殺細胞効果を引き上げる事が可能になることや、抗癌剤治療において耐性細胞が少なければ再発癌の治療が可能になることが分かってきました。加えて最近はアミノ酸トランスポーター阻害剤とシスプラチンの併用に関する基礎研究、分子標的薬剤による癌浸潤抑制に関する基礎研究を行っており、結果の一部を国内外の一流医学誌、AACR(米国癌学会)等で報告しています。これらの基礎研究は杏林大学薬理学教室櫻井裕之教授と共同で行っています。

平衡に関する臨床的研究

めまい患者に関しては経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation, TMS)による治療効果の検討を行うことを計画しています。当医学部は他施設で使用されているTMSと比較し、より深部の脳を刺激できる装置を有しています。より深部の脳を刺激することにより、難治性のめまい症状がどのように変化するかを分析する予定です。2013年4月現在は研究対象をどのような症例にするか検討中です。


聴覚に関する研究(基礎と臨床)

神経耳科学においては聴覚系のニューロンと感覚細胞とのシナプス形成に関する基礎研究を行っています。将来的に、人工聴覚器や再生医療へと幅広く応用が期待される研究です。この研究は日本学術振興会 学術研究助成基金助成金により運営されています。本年は、蝸牛外側壁イオンチャンネル分子の可逆的ノックアウトによる聴覚への影響も研究する予定です。遺伝性難聴に関しては、国立病院機構東京医療センター、慶應義塾大学他の協同研究施設として、遺伝子異常による難聴を疑う患者さんに同意を得た上で、遺伝子検査(血液検査)を行っています。既知の難聴遺伝子に対する解析で原因が判明しない場合には次世代シークエンサーによるヒト全遺伝子(約2万個)の全体の解析と難聴原因遺伝子の決定を行っています。15才以前に発症した対象者ではサイトメガロウィルスの胎内感染の可能性についても遺伝子解析を行うことが可能です。乾燥臍帯を保有していて、乾燥臍帯を使用したサイトメガロウイルス感染の解析に対する十分なインフォームドコンセントが得られた場合に限り解析を行っています。耳鳴に関しては、耳鳴患者さんの心理的背景をアンケート形式により分析するとともに、耳鳴によるストレス度の他覚的評価法の確立を目指した臨床研究を行っています。耳鳴類似音により、脳波、脳血流、心拍、皮膚抵抗、指尖温度にどのような変化が生じるかを検討しています。


中耳・耳管疾患の診断および治療

耳管機能障害には、耳管狭窄症を代表とする耳管の閉塞性疾患と、耳管開放症などの耳管閉鎖障害すなわち耳管の開放性疾患があります。特に最近は耳管開放症が増加傾向にあり、耳管狭窄症とともに難治例が増加していることなどから、これらの耳管機能障害には保存的治療には限界があるとされています。世界的に最も進んだ治療として、耳管開放症に対しては安定性で定評のある耳管ピン挿入術を、さらには耳管狭窄症、耳管開放症のいずれにも効果的である自己開発の人工耳管手術(特許取得登録済み;特許第4597864号;2010年、第4851938号:2011年、第5192231号:2013年、いずれも特許権者 守田雅弘)の臨床検討を予定しています。ただし、2011年には、安全確実に使用できる最新式の耳管鼓膜チューブ挿入術を開発し、あらゆる耳管機能障害に対して同等以上の治療効果を得ることが可能となりました。さらにいずれの技術も将来、人工材料に取って替わる自家組織を用いて作成可能となる公算が大きいものです。また、耳管開放症に対しては、これも世界的に最先端の再生医療として、安全性の高いストッパー付注入針による自家脂肪の耳管内粘膜下への移植手術の臨床検討を行います。守田雅弘准教授らは、耳管開放症で自家脂肪織の移植治療を、耳管閉塞性疾患である耳管狭窄症で耳管形成術をすでに予備的治療として成功させています。これらの研究は、米国ロサンゼルスのHouse Ear Institute(ハウス耳研究所)など主要耳科学専門機関へ情報供与していまして、今後の共同臨床治験の展開により世界的な波及が期待されます。


嚥下障害の診断および治療

嚥下障害に対しては、内視鏡を用いた嚥下機能検査(嚥下内視鏡検査)や、咽頭食道造影検査(嚥下造影検査)および嚥下圧検査を用いて嚥下動態の詳細な評価を行い、その結果としての様々な指標と予後との相関を検討する臨床研究を行っています。嚥下内視鏡検査の際に同時に嚥下訓練を行うvisual feedbackも取り入れており、また、咽頭期嚥下が障害されている症例には、舌接触補助床を導入するなど、侵襲のない最新の治療法を取り入れています。嚥下訓練後も誤嚥が続く場合には、嚥下機能改善手術や誤嚥防止手術の適応を検討します。大部分の誤嚥防止手術において術後は発声不能となりますが、長期的に嚥下機能が回復した場合に復元手術が可能な術式を選択します。嚥下反射の惹起性が低下している症例に対して、咽頭注水による嚥下惹起訓練の導入も検討しています。平成21年に開設された杏林大学摂食嚥下センターは、当教室が中心となって運営しています。摂食嚥下センターは、複数の診療科の医師や多職種の専門家によって、摂食嚥下障害に対するチーム医療を行う専門の外来部門です。摂食嚥下外来と摂食嚥下カンファレンスを二つの柱とし、集学的な摂食嚥下障害の診療を行い、活発な臨床研究を行っています。


近年の主な業績

  1. Masuda M, Kwang P, Chavez E, Ryan AF.: TFE2 and GATA3 enhance induction of POU4F3 and myosin VIIa positive cells in nonsensory cochlear epithelium by ATOH1. Developmental Biology. 372: 68-80, 2012.
  2. Kogashiwa Y, Nagafuji H, Kohno N.: Feasibility of concurrent chemoradiotherapy with S-1 administered on alternate days for elderly patients with head and neck cancer. Anticancer Res. 32(9):4035-40, 2012.
  3. Yamauchi K, Fujioka Y, Kohno N.: Sentinel node navigation surgery versus observation as a management strategy for early tongue carcinoma. Head Neck. 34(4):568-72, 2012.
  4. Masuda M, Kanzaki S, Minami S, Kikuchi J, Kanzaki J, Sato H, Ogawa K.: Correlations of inflammatory biomarkers with the onset and prognosis of idiopathic sudden sensorineural hearing loss. Otology & Neurotology. 33. 1142-1150, 2012.
  5. Masuda M, Dulon D, Pak K, Mullen LM, Li Y, et al : Regulation of POU4F3 gene expression in hair cells by 5' DNA in mice. Neuroscience. 197. 48-64, 2011.
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