泌尿器科診療では、常に新しい質の高い医療を取り入れ、最高の治療が出来るように努力しています。スタッフによるチーム医療を心がけ、入院患者さんはもとより外来患者さんの治療方針なども検討会で議論をし、安心して治療を受けられる診療科を目指して努力しています。
先進的医療としてゲノム医療を導入し、がん治療用ウイルスを用いたウイルス療法の臨床応用も行います。
教育においては、まず、患者の立場に立った医療を実践できる人材を輩出したいと考えております。一医療人である前に、一社会人であることが社会的にも求められてきております。最適な治療を行うには、それぞれの疾患を科学的によく理解した上で、その疾患に対する正しい治療哲学を必要とします。
泌尿器科学が扱う疾患は、癌・排尿・結石・腎不全など多岐に渡り、癌についても腎・膀胱・尿道・前立腺・精巣と臓器毎に特性がかなり異なっております。また、手技としては外科学的素養が核となります。
泌尿器科学の研鑽を通して、人としても良き医療人となるべく、情熱を持って教育にあたります。
「ウイルス療法」とは、遺伝子組み換え技術によって、正常細胞は障害せずにがん細胞のみを破壊するウイルス(がん治療用ウイルス)を作製して治療に用いるものです。すでに欧米では第2世代がん治療用ヘルペスウイルス1型のT-VECが認可され、一般臨床で用いられています。我々は、第3世代がん治療用ヘルペスウイルス1型であるG47Δ(じー・よんじゅうなな・でるた)を用いたウイルス療法の研究をおこなっております。当科主任教授の福原が研究代表者となり、前立腺癌に対する世界初の第I相臨床試験が東京大学でおこなわれ、安全性が確認されました。ウイルスの効果をさらに検証すべく、現在杏林大学において第II相臨床試験を行っております。
前立腺の末梢血循環癌細胞(CTC)の検出を行い、遺伝子解析にて病期および予後との関係を検討し報告してきました。癌治療の複雑化、さらには医療費の高騰が大きな問題となっており、いわゆる”Precision Medicine”実現 に向けたバイオマーカーの開発が大きな課題となっています。このような状況で2017年Liquid Biopsy研究会を立ち上げました。科の枠を超えてより幅広い領域の専門家が多数参加いただいています。
杏林大学泌尿器科では1994年から厚労省の多発性嚢胞腎研究班会議の中心メンバーとして臨床研究を行なってきました。2014年3月、世界に先駆けて日本で、引き続いてカナダ,EU、米国等で多発性嚢胞腎に対する治療薬としてサムスカが承認されました。それまで、多発性嚢胞腎の治療は疼痛、感染、高血圧等に対する対症療法しかなく、病気の進行を抑制する治療薬が開発されたのは画期的な進歩でした。この開発研究に杏林大学泌尿器科は積極的に取り組んできました。