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Faculty of Medicineヒト胃からのヘリコバクター・スイスの培養に成功し、ヒト胃における病原細菌であることを証明

徳永健吾(総合医療学教室・准教授)
大﨑敬子(感染症学教室・教授)

研究のハイライト
  • 複数の胃疾患患者からのヘリコバクター・スイスを人工培地での分離培養に世界で初めて成功した。
  • 得られたヒト由来ヘリコバクター・スイスを用いたマウス感染実験により病態発症を確認し、菌の再分離にも成功したことから、コッホの原則に従い、ヘリコバクター・スイスがヒト胃における病原細菌であることを証明した。

概要

 国立感染症研究所、杏林大学、北里大学の研究グループは、ヒト胃からのヘリコバクター・スイスの培養に世界で初めて成功し、マウス感染実験によりヘリコバクター・スイスが胃の病原細菌であることを証明しました。本研究成果は、2021年3月23日にProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要) のオンライン版に掲載されました。

 ヒト胃からのヘリコバクター・スイスの培養に世界で初めて成功し(下図)、さらに患者の胃から分離されたヘリコバクター・スイスを用いたマウス感染実験により、感染4か月後のマウス胃粘膜において、炎症性変化および化生性変化が観察され、胃での病態発症が確認されました。
 また感染マウスの胃から分離された菌と患者の胃内のヘリコバクター・スイスとのゲノムレベルでの同一性が確認されました。つまり、コッホの原則により、ヘリコバクター・スイスが胃の病原細菌であることを証明するに至りました。
 分離されたヘリコバクター・スイスの完全ゲノム配列を決定し、豚由来株と比較したところ、ヒト由来株はゲノムレベルで豚由来株に類似しており、豚を起源とするH. suisが人にも病原性を有する人獣共通感染症起因菌である可能性が示されました。
今後、ヘリコバクター・スイスの病態発症機構の解明や診断法の開発などが期待されます。

 本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「ヒト胃に感染するピロリ菌以外のヘリコバクター属菌による感染病態の解明」(研究開発代表者:林原絵美子)、「薬剤耐性菌対策に資する診断法・治療法等の開発研究」(研究開発分担者:鈴木仁人)および日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金基盤研究(B)「ヘリコバクター・ハイルマニイ感染とその対策」(研究開発代表者:松井英則)、同学術研究助成基金助成金基盤研究(C)「胃MALTリンパ腫におけるH.suisおよび胃内microbiomeの病態解析」(研究開発代表者:徳永健吾)による支援を受けました。

ヘリコバクター・スイスの電子顕微鏡像
ヒト胃より分離されたヘリコバクター・スイスの電子顕微鏡像

コッホの原則: ドイツの細菌学者ロベルト・コッホにより提唱された感染症の病原体を特定する際の指針。①ある特定の病気には特定の微生物が見出されること、②その微生物を分離培養できること、③分離した微生物を感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こせること、④感染させた動物の病巣部から同じ微生物が分離されること、からなる4原則。


掲載論文
発表雑誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
論文タイトル:Isolation and characterization of Helicobacter suis from human stomach
筆 者:Emiko Rimbara1 $#, Masato Suzuki2 $, Hidenori Matsui3 #, Masahiko Nakamura4, Misako Morimoto5, Chihiro Sasakawa5,6, Hiroki Masuda7,8, Sachiyo Nomura7, Takako Osaki9, Noriyo Nagata10, Keigo Shibayama1, Kengo Tokunaga11 #  ($ 筆頭著者、# 責任著者)
所属 1. 国立感染症研究所 細菌第二部  2. 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター  3. 北里大学 大村智記念研究所  4. 北里大学 薬学部  5. 一般財団法人日本生物科学研究所  6. 千葉大学 真菌医学研究センター  7. 東京大学 大学院医学系研究科 消化管外科学  8. 日本医科大学 消化器外科  9. 杏林大学 医学部 感染症学教室  10. 国立感染症研究所 感染病理部  11. 杏林大学 医学部 総合医療学教室 
DOI: 10.1073/pnas.2026337118

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