大学ホーム医学研究科教育・研究指導研究室・研究グループ小児科学教室

研究室・研究グループ紹介:小児科学教室

研究グループ及び研究課題

当教室の研究室内には、分子生物学、タンパク質化学、動物実験、遺伝子探索を行うために必要な設備が設置されています。また、 研究棟内の共同研究部門に装備されている質量解析装置、次世代型シーケンサー、電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡を使用することができます。当教室では、 医員や大学院生がこれらの設備を使用して、これまで数多くの国際レベルの成果を発表してきました。現在の研究テーマは、殆ど全ての臓器機能の維持、障害の 原因に関わる可能性のある新規分子群について、機能の解明を行うことです。タンパク質のユビキチン化をコントロールする分子(USP40)、遺伝子発現を 制御する環境因子(エピジェネティクス)として機能する分子(NSD3)については、ノックアウトマウスを樹立し、多くの臓器発生や機能維持に関わるこれ らの生物学的役割の解明を行っています。さらに、当教室の研究グループは、糖質ステロイドにより誘導される新規分子(GLCCI1)は、未だ明らかでない 糖質ステロイド作用の下流に根幹的に関わる分子であることを明らかにしました。このGLCCI1とその相互作用分子の変異や一塩基多型が、糖質ステロイド の感受性に関わることを仮説として、現在多施設から多くのネフローゼの患者さんの血液をご提供頂いて、解析を急いでいます。さらに、この分子の機能を足場 として、副作用の少ない糖質ステロイド代替薬の創薬化研究を、京都大学薬学部との共同研究で行っています。

これらの教室全体の研究テーマの他に、下記のように各研究グループは、独自のテーマについて研究を行っています。

腎臓

新規の腎糸球体特異的分子の蛋白機能解析を行い、その蛋白発現障害モデルの確立と、これに対する各種免疫抑制薬の薬理作用機序の解明をテーマとして研究活動を行っています。特に、これらの障害に果たす糖質ステロイドやシクロスポリン、ミゾリビンなど免疫抑制薬の未知の薬理作用を同定することを研究しており、薬理学教室とも密接な協力関係にあります。また、遺伝子解析技術から得られた遺伝情報を基に、その蛋白機能解析を行う事で疾患の病態解明も進めております。

血液・腫瘍

新規の白血病治療の開発を目標とした研究を行っています。小児に多い急性リンパ性白血病は、長期生存率が80%を超え、治癒する可能性が高い疾患となり、他の悪性疾患の治療モデルにもなっています。しかし、治癒に至るメカニズムは解明されておらず、より洗練された治療や通常の治療では治癒を期待できない難治例に対する治療の開発が必要です。
近年、白血病細胞の中に、より未熟で、治療に対して抵抗性を持つ白血病幹細胞が存在することが明らかにされました。白血病の治癒のためには、この白血病幹細胞の根絶こそが必要と考えられます。血液班では、白血病細胞株を用いて、白血病幹細胞における薬剤抵抗性のメカニズムを研究しています。また、急性リンパ性白血病治療における最も重要なキードラッグはステロイド剤ですが、その作用機序については、まだ十分に明らかになっていません。このメカニズムを蛋白レベルで解明することにより、新規治療の開発を目指しています。

膠原病

全身性エリテマトーデスのモデルマウスの1つとして知られているTSAdノックアウトマウスを用い、研究を行なっています。TSAd分子は血管内皮細胞にも発現し、血管新生に関わることから、同分子と未熟児網膜症の関わりについての研究も行なっています。また、膠原病・自己炎症症候群は稀少な疾患で、特徴的な症状を呈する場合を除き、その診断は容易ではありません。その一方で、様々な疾患との鑑別に挙がることが多く、また確定診断することにより、特異的な治療法が開発されていることから、患者さんの生活の質の向上が得られています。それらの診断には多くの場合、遺伝子診断が必要となり、遺伝性炎症性疾患の検査については多施設共同研究事業が行われています。当教室も本共同研究への参加のため現在、整備を進めているところです。

アレルギー

食物アレルギーをメインテーマとしています。当院では経口食物負荷試験を年間150件程度行っており、結果をデータベース化して傾向の把握を行っています。また、食物アレルギーの特殊型である花粉-食物アレルギー症候群や新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)についても症例を集積しています。花粉-食物アレルギー症候群では、花粉に対する免疫療法と交差抗原を有する食物摂取時の症状の変化についての研究を検討しています。新生児乳児蛋白誘発胃腸炎については、当院では外科疾患と関連した症例の管理にも携わるため、発症の一因を探索中です。

神経

多施設と共同で、不随意運動についての研究を行っています。"経頭蓋磁気刺激"と東京都医学総合研究所で開発された"定量的運動解析システム"を利用し、不随意運動を客観的に評価する方法を確立することで、正確な治療効果の評価が可能となり、不随意運動の重症度の評価や疾患毎の不随意運動の特徴についても、詳細な評価ができるようになると考えています。
また、院内の関係各科と連携し結節性硬化症診療チームを結成しており、小児期から成人期まで集学的治療が可能である。現在、新たな治療薬(アフィニトールやビガバトリン)が使用できる環境を整備しており、今後はてんかんに対する治療効果と神経発達予後についての研究を行う予定です。

循環器

先天性心疾患のみならず全身疾患における循環動態、心機能評価について心臓超音波検査を用いて積極的に探索しています。
川崎病については血管炎の新規バイオマーカーの探索、川崎病に関する疫学調査への参加および冠動脈瘤に対しての画像評価も行っております。また、高校生までを対象とした学校心臓検診にも協力し精査・治療を行っています。

内分泌

当院は周産期母子医療センターを有し、特に低出生児の内分泌的ケアを要する場面に多く遭遇します。特にSGA性低身長症の治療では、身長の改善のみならず、運動能力の改善を認める場面も少なくありません。これらの児におけるGH治療による発達面での効果について検討しています。また、Down症候群の症例の甲状腺機能異常の特性について研究を行っています。

新生児分野

早産児、低出生体重児を中心に、小児外科疾患、新生児心疾患、神経疾患や先天異常など、小児科の各専門分野と共に多様な症例に対応しています。豊富な症例経験を有することから、『late preterm児のリスク因子に関する検討』や、『低血糖のハイリスク児に対する血糖管理方法の検討』、『正期産児の原発性無呼吸発作に関する疫学的検討』、『左室容量負荷のPDA重症化に関する検討』など、ベットサイドから得られた情報をもとにした臨床研究を行っています。
一方、これまで、動物モデルを用いた人工呼吸器による肺損傷の発生機序に関する基礎研究を行ってきました。その発症には多核白血球に重要な役割があり、PAFなどのメディエータ、IL-8やTNFなどのサイトカインが関与していることを示しました。これは、実臨床における高頻度振動換気法(HFO)の使用や、吸入気酸素濃度の細かな調節などに応用され、重症慢性肺疾患の明らかな減少につながっています。
さらに、外部の調査研究にも積極的に参加協力しています。東京新生児研究会の一員として『NICU入院児における脳性麻痺発症状況の調査研究』や『新生児病棟(NICU・GCU)における予防接種実施状況に関する調査研究』、そして厚労省研究班の『低酸素性虚血性脳症に対する自己さい帯血幹細胞治療に関する研究』に参加しています。

近年の主な業績

  1. Ito Y, Katayama K, Nishibori Y, Akimoto Y, Kudo A, Kurayama R, Hada I, Takahashi S, Kimura T, Fukutomi T, Katada T, Suehiro J, Beltcheva O, Tryggvason K, Yan K: Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1-like 1 epigenetically regulates nephrin gene expression. Am J Physiol Renal Physiol. 2017 Feb 22:ajprenal.00305.2016. doi: 10.1152
  2. Takagi H, Nishibori Y, Katayama K, Katada T, Takahashi S, Kiuchi Z, Takahashi S, Kamei H, Kawakami H, Akimoto Y, Kudo A, Asanuma K, Takematsu H, Yan K: USP40 gene knockdown disrupts glomerular permeability in zebrafish. Am J Physiol Renal Physiol. 2017 Apr 1;312(4):F702-F715. doi: 10.1152
  3. Fukuhara D, Takiura T, Keino H, Okada AA, Yan K: Iatrogenic Cushing's Syndrome Due to Topical Ocular Glucocorticoid Treatment. Pediatrics. 2017 Jan 19. pii: e20161233. doi: 10.1542/peds.2016-1233. [Epub ahead of print] PMID: 28104732
  4. Komatsu Y, Suzuki T, Tsurusaki Y, Miyake N, Matsumoto N, Yan K: TMEM67 mutations found in a case of Joubert syndrome with renal hypodysplasia. CEN Case Rep DOI 10.1007/s13730-0150210-1.
  5. Kutsuna S, Yonetani S, Araki K, Izumiya H: A case of pediatric patient with acute enteritis due to CTX-M-15 extended-spectrum β-lactamase-producing Salmonella Blockley. Jpn J. Antibiot. 69(5):343-346,2016
  6. Fumoto S, Hosoi K, Ohnsihi H, Hoshina H, Yan K, Saji H, Oka A: Chimerism of buccal membrane cells in a monochorionic dizygotic twin. Pediatrics 2014 Apr;133(4):e1097-100. doi: 10.1542.
  7. Yan K, Ito N, Nakajo A, Kurayama R, Fukuhara D, Nishibori Y, Kudo A, Akimoto Y, Takenaka H: The struggle for energy in podocytes leads to nephrotic syndrome. Cell Cycle 11:1504-1511, 2012.
  8. Kurayama R, Ito N, Nishibori Y, Fukuhara D, Akimoto Y, Higashihara E, Ishigaki Y, Sai Y, Miyamoto K, Endou H, Kanai Y, Yan K: Role of amino acid transporter LAT2 in the activation of mTORC1 pathway and the pathogenesis of crescentic glomerulonephritis. Lab Invest 81:992-1006, 2011.
  9. Ito N, Nishibori Y, Ito Y, Takagi H, Akimoto Y, Kudo A, Asanuma K, Sai Y, Miyamoto KI, Takenaka H, Yan K: mTORC1 activation triggers the unfolded protein response in podocytes and leads to nephrotic syndrome. Lab Invest 91:1584-1595, 2011.

関連する内容が「科目の特長」ページにあります。

このページのトップへ

PAGE TOP