キーワード | 小説・文学批評・語り手 |
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講師 | 三牧 史奈 |
皆さんがこれまで見たり、聞いたり、読んだりしてきた数々の物語の中で、一番面白いと感じた物語はどの様なものですか。そしてその物語が、自分にとってなぜ面白かったのか(あるいは、その他の物語はなぜつまらなかったのか)と、考えたことはあるでしょうか?何もかも読みっぱなしな「受動的」な読者ではなく、皆さんにはぜひとも読んで色々と考える「能動的」な読者になってもらいたいと思います。そして、皆さんには自分自身の「読み」を「楽しむ」経験から「批評する」経験へとアップグレードしていって欲しいと思います。
「小説」を英語で何と言いますか?そう、(novel)です。しかし、この(novel)という単語には別の意味もあります。それは、「新しい、新奇な、奇抜な」という意味です。このことは、小説があらゆる文学形式の中で最も新しいものであることを示唆しています。多くの作家達は、様々な規則から解放された自由な小説形式を駆使して、ありとあらゆる新しい試みを行ってきました。しかし、小説にはたった一つだけ逃れられない制約があったのです。そう、語り手です。語り手無しで小説の世界は読者とつながることはできません。
本講義は、語り手という、物語を構築する上で最も欠かせない要素に焦点を当てながら作品を読み直すことを通じて、文学作品を能動的に読む力を身に付けることを目的とします。