キーワード | 「ある」,“DO”,サピア=ウォーフの仮説 |
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講師 | 稲垣 大輔 |
川端康成の『雪国』は「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という一文で始まります。この文を英語に訳すと “The train came out of the long tunnel into the snow country.”。両者を比較してみると、日本語では主語がなく、「ある」という動詞を用いているのに対し、英語ではthe trainという主語がcomeと動作を「する」という形をとっています。さらに、英語では主語を必ず表さなければならないのに対し、日本語では主語はよく省略されます。本講義では、様々な具体例を見ながら、「する」型言語としての英語と「ある」あるいは「なる」型言語としての日本語を比較言語学的な視点から考察して、英語と日本語の視点・発想の違いを明らかにします。さらに「文化は言語である」「概念の範疇化は言語・文化によって異なる」という「サピア=ウォーフの仮説」を紹介し、「する」的言語・「ある・なる」的言語という言語類型が、文化の類型としても認められ、私たち日本人の世界観を形成していることを見ていきます。