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Faculty of Medicine腎癌の代謝特性に腫瘍内ヘテロ性が存在することが明らかに

中村 雄(泌尿器学 助教)
桶川 隆嗣(泌尿器学 教授)

研究のハイライト
  • 腎癌において代謝特性の腫瘍内ヘテロ性が存在することを解明した。
  • ピルビン酸が腎癌の増殖に関係しており、ピルビン酸代謝が新たな治療の標的となる可能性を示した。

概要

20世紀終わり頃より遺伝子異常に関する研究が盛んに行われ、多くのガン遺伝子およびガン抑制遺伝子が同定されてきました。しかしながら、ガン細胞の生存や増殖には、遺伝子以外に細胞内代謝(エネルギーの産生、変換、蓄積など)のメカニズムが重要な役割を担う、ということが提唱されています。
一方、実際のガン治療では、ガンが治療抵抗性となることが問題になります。その要因の一つに、腫瘍内ヘテロ性(腫瘍組織が均一な細胞集団でないこと)が挙げられており、遺伝子に関する腫瘍内ヘテロ性については様々な癌種で多数の研究がなされてきました。しかしながら、代謝特性に関する腫瘍内へテロ性については、十分に解明されていません。
そこで、杏林大学医学部付属病院で腎摘除術を行った腎癌の手術標本を用い、同一標本内の異なる部位の代謝物質解析を行いました。その結果、腫瘍内の代謝物プロファイルが部位毎に異なるということを見出しました。これは、代謝特性に関して腫瘍内へテロ性が存在すること示しています。
さらに、ピルビン酸代謝活性が腫瘍組織の部位により異なることから、ピルビン酸に着目し研究を進めると、ピルビン酸が腎癌細胞の増殖を促進すること、ピルビン酸トランスポーターの阻害がマウスに移植したヒト由来腎癌組織の増殖を遅らせることが明らかになりました。これは、腎癌細胞の増殖にピルビン酸が強く関係しており、ピルビン酸代謝が治療標的の一つとなることを示唆しています。
腎癌の代謝特性における腫瘍内ヘテロ性を初めて明らかにした本研究がガンの代謝解明およびガンの代謝を標的とした革新的な治療薬開発への発展につながることを期待しています。本研究は、武田薬品工業との共同研究であり、2017年5月にCellとThe Lancetの共同オンライン出版誌EBioMedicineに掲載されました。


掲載論文
発表雑誌:EBioMedicine [ Vol.19, pp.31 – 38 (2017) ]
論文タイトル: Intratumor Heterogeneity in Primary Kidney Cancer Revealed by Metabolic Profiling of Multiple Spatially Separated Samples within Tumors.
筆 者:Takatsugu Okegawa, Megumi Morimoto, Satoru Nishizawa, Satoshi Kitazawa, Kohei Honda, Hideo Araki, Toshiya Tamura, Ayumi Ando, Yoshinori Satomi, Kikuo Nutahara, Takahito Hara
(桶川 隆嗣、森本 恵、西澤 諭、北澤 諭、本田 弘平、荒木 秀夫、田村 寿哉、安藤 亜由美、里見 佳典、奴田原 紀久雄、原 隆人)
DOI:10.1016/j.ebiom.2017.04.009

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