大学ホーム医学研究科教育・研究指導研究室・研究グループ小児科学教室

研究室・研究グループ紹介:小児科学教室

研究グループ及び研究課題

小児科学教室では専門分野の研究グループが、疾患の発症メカニズムや病態、治療反応性などを解明するための研究を行っています。

研究室では、分子生物学、タンパク質化学、動物実験、遺伝子探索などの基礎研究を行っています。当教室では医員や大学院生がこれまで数多くの国際レベルの成果を発表してきました。現在はおもにタンパク質のユビキチン化をコントロールする分子(USP40)、上皮細胞に発現し極性に関連する分子 (CRB2)、糖質ステロイドにより誘導される新規分子(GLCCI1)などの機能解析および疾患との関連について研究を行っています。

この他多施設共同の臨床研究、各種疾患に関する症例集積観察研究、疾患の長期予後を観察する前向きコホート研究などを実施・計画しています。

アレルギー

食物アレルギーをメインテーマとしています。当院では経口食物負荷試験を年間250件程度行っております。結果をデータベース化して傾向の把握を行い、臨床検査医学と共同で近年増加傾向にあるナッツアレルギーの診断等に関する研究をおこなっています。

また、新生児-乳児消化管アレルギー(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)についても症例を集積し、診断の一助になる方法について研究を行っています。アレルギー疾患の発症に関与する因子の解析、さらに発症予防効果が期待される介入についての研究を行う予定です。

腎臓

腎疾患の治療に頻用される糖質ステロイドについての研究を行っています。糖質ステロイド作用の実行分子Glucocorticoid-induced transcript1 (GLCCI1)が、胸腺T細胞では抗アポトーシス作用を発揮することを明らかにしました。このGLCCI1と相互作用する分子の変異が糖質ステロイドの感受性に関わる可能性について、ネフローゼ患者さんの血液をご提供いただき解析をすすめています。さらに、小児において糖質ステロイドの長期使用は骨軟骨の成長障害を惹起させるため、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞でのアポトーシス経路とGLCCI1の関与について解析しています。

また小児のネフローゼ症候群の発症に関わる免疫異常についての研究を行っています。ネフローゼ患者さんの腎組織の診療で使用した残りの検体や血液をご提供いただき、発現RNAを解析し、発症メカニズムに関わる免疫異常を解明する研究を行っています。

ほかに本邦における小児腎疾患の原因解明のための多施設共同研究にも多く参加しております。

血液・腫瘍

新規の白血病治療の開発を目標とした研究を行っています。小児に多い急性リンパ性白血病は、長期生存率が80%を超え、治癒する可能性が高い疾患となり、他の悪性疾患の治療モデルにもなっています。しかし、治癒に至るメカニズムは解明されておらず、より洗練された治療や通常の治療では治癒を期待できない難治例に対する治療の開発が必要です。

近年、白血病細胞の中に、より未熟で、治療に対して抵抗性を持つ白血病幹細胞が存在することが明らかにされました。白血病の治癒のためには、この白血病幹細胞の根絶こそが必要と考えられます。血液班では、白血病細胞株を用いて、白血病幹細胞における薬剤抵抗性のメカニズムを研究しています。また、急性リンパ性白血病治療における最も重要なキードラッグはステロイド剤ですが、その作用機序については、まだ十分に明らかになっていません。このメカニズムを蛋白レベルで解明することにより、新規治療の開発を目指しています。

リウマチ・膠原病

リウマチ・膠原病は稀少な疾患であることから、その疫学や、治療の有効性・安全性を明らかにするために、多施設による疾患の集積が必要不可欠であり、当科においても小児リウマチ性疾患レジストリ研究に参加し、症例の登録を行っています。

また、それらの疾患の診断は必ずしも容易ではありませんが、近年、次々と特異的な治療法が開発され、患者さんの生活の質の向上が得られており、正確かつ迅速な診断が求められています。診断における強力なツールの一つとして遺伝子学的検査があり、ここ数年で保険適応が急速に拡大し、一部の疾患においては、有益な情報を得ることができています。しかし、時に病原性の明らかでない遺伝情報が見つかることがあるため、我々は得られた新規遺伝子バリアントについては、培養細胞を用いた機能解析から病態解明に努めており、最終的には新たな治療ターゲットの発見を目指しております。

神経

  • 新生児や小児のてんかん症候群の診断と治療を積極的に行うため、多施設共同研究(昭和大学など)に参加しています。「てんかん症候群の原因解明と治療法開発」
  • 新生児や小児の中枢神経系の先天奇形の診断と治療を積極的に行うため、多施設共同研究(昭和大学など)に参加しています。「脳形成障害の原因解明と治療法開発」
  • 高アルカリフォスファターゼ血症・精神発達障害・てんかん発作を主訴とする先天性GPI欠損症の検査・診断を積極的に行うため、多施設共同研究(大阪大学など)に参加しています。「てんかん・高アルカリフォスファターゼ血症・精神運動発達障害等を呈する患者における遺伝子変異の検索と先天性GPI欠損症の病態解析 」

循環器

先天性心疾患に関しては産婦人科の協力のもと的確な時期に胎児診断を行い、重症先天性心疾患の早期発見に努め専門医療機関と連携しています。画像診断、主に心臓超音波検査を用いて川崎病の心後遺症や全身疾患の心合併症の循環動態の評価を行っています。学校保健に定められている心臓検診に参加し、三鷹市や近隣の市区町村の児童生徒に対して精査医療機関の役割を果たしています。

内分泌

当院は近隣のクリニックの先生方から症例をご紹介いただくことが多く、日常の一般診療でも出会うような内分泌疾患を多く経験させていただいております。その特性を活かし、当施設から日常の一般外来診療にfeed backできるような研究テーマを探索しています。2019年には、低フォスファターゼ症の特徴である"低ALP血症"が、一般小児の血液検査中でどのくらいの頻度で見られるかを検討し、「血清ALP 300IU/L未満を呈した小児における臨床的背景の検討」と題して、小児内分泌学会で発表させていただきました。

また当院は周産期母子医療センターを有し、特に早産児・SGA児の内分泌的ケアを要する場面に多く遭遇します。まだ検討段階ではありますが、「SGA性低身長症のGH治療による運動能力への効果」「長期視点で見た早産児の骨密度の評価」について、今後取り組むことを考えています。

新生児分野

AMED(日本医療研究開発機構)研究班の『低酸素性虚血性脳症に対する自己さい帯血幹細胞治療に関する研究』、『RSウイルス感染により重篤化リスクを伴う新⽣児,乳児,および幼児を対象としたパリビズマブの多施設共同⾮対照⾮盲検試験』、『小児医薬品の早期実用化に資するレギュラトリーサイエンス研究』や、『未熟児動脈管開存症に対するアセトアミノフェン静注療法の安全性及び有効性に関する多施設共同ランダム化比較試験』など、海外を含む他施設との共同研究に参加しています。

早産児、低出生体重児の症例が多いことから、実際の臨床で得られる情報を元に、『Late preterm児のリスク因子に関する検討』、保健学部と共同で『Late preterm児の乳幼児期から学童期に見られる神経発達障害と予防的早期介入の研究』などの解析も行っています。これまで人工呼吸器による肺損傷の発生機序に関する基礎研究を行ってきましたが、高頻度振動換気法(HFO)や新しい呼吸器モードであるneurally adjusted ventilatory assist(NAVA)を積極的に導入して、重症慢性肺疾患の減少を目指しています。

近年の主な業績

  1. Kiuchi Z, Nozu K, Yan K: H Jüppner. Bartter syndrome type 1 due to novel SLC12A1 mutations associated with pseudohypoparathyroidism type II. JCEM Case Reports. 1:1-7, 2023
  2. Takada M , Fukuhara D , Takiura T , Nishibori Y , Kotani M , Kiuchi Z, Kudo A, O Beltcheva, Ito-Nitta N, R Nitta K, Kimura T, Suehiro J, Katada T, Takematsu H, Yan K: Involvement of GLCCI1 in mouse spermatogenesis. FASEB J. 37(1):e22680,2023
  3. Ozawa Y, Miyake F, Isayama T: Efficacy and safety of permissive hypercapnia in preterm infants: A systematic review. Pediatr Pulmonol. 57(11):2603-2613, 2022
  4. Hada I, Shimizu A ,Takematsu H, Nishibori Y, Kimura T , Fukutomi T, Kudo A , Ito-Nitta N, Kiuchi Z, J Patrakka, Mikami N, S Leclerc, Akimoto Y , Hirayama Y, Mori S, Takano T, Yan K: A Novel Mouse Model of Idiopathic Nephrotic Syndrome Induced by Immunization with the Podocyte Protein Crb2. J Am Soc Nephrol. 33(11):2008-2025, 2022
  5. Takahashi S, Fukuhara D, Kimura T, Fukutomi T, Tanaka E, Mikami N, Hada I, Takematsu H, Nishibori Y, Akimoto Y, Kiyonari H, Abe T, Huber O, Yan K: USP40 deubiquitinates HINT1 and stabilizes p53 in podocyte damage. Biochem Biophys Res Commun 614:198-206, 2022.
  6. Mitsui K, Fukuhara D, Kimura T, Ando R, Narita M: Psoriasiform eruption with arthritis post infliximab use in Kawasaki disease. Pediatr Int. 64(1):e15232, 2022
  7. Yoshino H, Gemma Y, Miyazawa N, Bessho F, Yan K: Therapy-related acute megakaryoblastic leukemia with severe myelofibrosis. Pediatr Int. 64(1):e14842, 2022.
  8. Ogihara A, Miyata Y, Hosaki A, Narita M, Yan K: A Japanese case of multisystem inflammatory syndrome in children, Pediatr Int. 64(1):e14869, 2022.
  9. Prusakov P, Goff DA, Wozniak PS, Hosoi K, Sánchez PJ, Global NEO-ASPetStudy Group, et al.: A global point prevalence survey of antimicrobial use in neonatal intensive care units: The no-more-antibiotics and resistance (NO-MAS-R) study. EClinicalMedicine. 2021 Jan 29;32:100727.
  10. Eriko Tanaka, Tomoya Kaneda, Yuko Akutsu, Toru Kanamori, Mariko Mouri, Masaaki Mori: Juvenile-onset Systemic Lupus Erythematosus Accompanied by Secondary Thrombotic Microangiopathy. J Cell Immunol 2(5).254-258, 2020.
  11. Yoshino H, Nishiyama Y, Kamma H, Chiba T, Fujiwara M, Karaho T, Kogashiwa Y, Morio T, Yan K, Bessho F, Takagi M. Functional characterization of a germline ETV6 variant associated with inherited thrombocytopenia, acute lymphoblastic leukemia, and salivary gland carcinoma in childhood. Int J Hematol 112.217-222, 2020.
  12. Miyata Y, Hamanaka K, Kumada S, Uchino S, Yokochi F, Taniguchi M, Miyatake S, Matsumoto N. An atypical case of KMT2B‐related dystonia manifesting asterixis and effect of deep brain stimulation of the globus pallidus. Neurol Clin Neurosci doi.org/10.1111/ncn3.12334, 2019.
  13. Kiuchi Z, Nishibori Y Kutsuna S, Kotani M, Hada I, Kimura T, Fukutomi T, Fukuhara D, Kudo A, Takata T, Ishigaki Y, Tomosugi N, Tanaka H, Matsushima S, Ogasawara S, Hirayama Y, Takematsu H, Yan K: GLCCI1 is a novel protector against glucocorticoid-induced apoptosis in T-cell. FASEB J doi: 10.1096/fj, 2019.
  14. Kiuchi Z, Ogura M, Sato M, Kamei K, Ishikura K, Abe J, Ito S: No preventive or therapeutic efficacy of infliximab against macrophage activation syndrome due to systemic juvenile idiopathic arthritis. Scand J Rheumatol 48:246-248, 2019.
  15. Fukuhara D, Takiura T, Keino H, Okada AA, Yan K: Iatrogenic Cushing's Syndrome Due to Topical Ocular Glucocorticoid Treatment. Pediatrics 139(2):e20161233, 2019.
  16. Hamano S, Nishibori Y, Hada I, Mikami N, Ito-Nitta N, Fukuhara D, Kudo A, Xiao Z, Nukui M, Patrakka J, Tryggvason K, Yan K: Association of crumbs homolog-2 with mTORC1 in developing podocyte. PLoS One 13(8):e02024002018, 2019.
  17. Miyata Y, Saida K, Kumada S, Miyake N, Mashimo H, Nishida Y, Shirai I, Kurihara E, Nakata Y, Matsumoto N: Periventricular small cystic lesions in a patient with Coffin-Lowry syndrome who exhibited a novel mutation in the RPS6KA3 gene. Brain Dev 40:566-569, 2018.
  18. Gemma Y, Bessho F, Yoshino H: Treatment of acute lymphoblastic leukemia in Down syndrome. Cogent Medicine 4:1304512, 2017.
  19. Takagi H, Nishibori Y, Katayama K, Katada T, Takahashi S, Kiuchi Z, Takahashi S, Kamei H, Kawakami H, Akimoto Y, Kudo A, Asanuma K, Takematsu H, Yan K: USP40 gene knockdown disrupts glomerular permeability in zebrafish. Am J Physiol Renal Physiol 702-715, 2017.
  20. Ito Y, Katayama K, Nishibori Y, Akimoto Y, Kudo A, Kurayama R, Hada I, Takahashi S, Kimura T, Fukutomi T, Katada T, Suehiro J, Beltcheva O, Tryggvason K, Yan K: Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1-like 1 epigenetically regulates nephrin gene expression. Am J Physiol Renal Physiol 312(6):F1184-F1199, 2017.
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