研究室・研究グループ紹介:形成外科学教室
形成外科で扱われる疾患の中には、未だに病因が充分に分かっていないものや治療法が確立されていないものが数多くあります。そのため大学の研究室では、新たな治療法の確立に向けて積極的に研究が行われています。
組織移植術の研究
マイクロサージャリーによる組織移植術の研究は、多久嶋亮彦教授が中心となり、ラットやウサギを用いて研究を行っています。現在は主に皮弁の血行に関する研究や、血流評価の方法の開発など臨床に直結する研究を行っています。また形成外科学研究室には手術用顕微鏡が2台装備され、マイクロサージャリーの技術を身につけるのにも良い環境です。
業績
- Sakisaka M, Kurita M, Okazaki M, Kagaya Y, Takushima A, Harii K. Drug-induced atrial fibrillation complicates the results of flap surgery in a rat model. Ann Plast Surg 76: 244-248, 2016
- Kagaya Y, Ohura N, Kurita M, Takushima A, Harii K. Examination of tissue oxyten saturation (StO2) changes associated with vascular pedicle occlusion in a rat island flap model using near-Infrared spectroscopy. Microsurgery 35: 393-398, 2015
- など
顔面神経麻痺に関する研究
顔面神経麻痺に関する研究は、多久嶋亮彦教授が中心となり、様々なアプローチから治療法に関連する研究を行っています。筋組織の生理機能に関する研究や神経の再生に関する研究、また臨床研究も積極的に行っています。
業績
- Takushima A, Harii K, Asato H, Kurita M, Shiraishi T. Fifteen-year survey of one-stage latissimus dorsi muscle transfer for treatment of longstanding facial paralysis. J Plast Reconstr Aesthet Surg 66: 29-36, 2013.
- Kurita M, Yamazaki K, Eto H, Seike S, Takushima A, Harii K. Reinnervation of segmented latissimus dorsi muscle with the distal stump of the thoracodorsal nerve: A preliminary experimental study in rats. Microsurgery 33:545-550,2013.
- など
創傷治癒・再生医療の研究
大浦紀彦教授が中心となり、重症下肢虚血患者に対する血流評価の精度を向上させるための基礎研究を行っています。また、遺伝子、細胞レベルでの創傷治癒メカニズムの解明を目指した基礎研究を行っています。近年は創傷治癒過程における単球・マクロファージ系細胞の役割に注目して研究を行っています。
業績
- Suga H, Kurita E, Kurachi E, Takushima A. Passage culture of human monocyte/macrophage lineage cells using a temperature-responsive culture dish. Cytometry A. 93: 393-396, 2018
- Suga H, Rennert RC, Rodrigues M, Sorkin M, Glotzbach JP, Januszyk M, Fujiwara T, Longaker MT, Gurter GC. Tracking the elusive fibrocytes: Identification and characterization of collagen producing hematopoietic lineage cells during murine wound healing. Stem Cells, 32: 1347-1360, 2014.
- など
血管奇形に関する研究
血管奇形は難病の一つであり、当科では尾崎峰教授を中心に治療法の開発をすすめています。近年は血管奇形に対する硬化療法の際に用いられる種々の硬化剤について、効果発現のメカニズムや組織障害性について研究を行っています。
業績
- Satoh T, Kurita M, Suga H, Eto H, Ozaki M, Takushima A, Harii K. Efficient isolation and culture of endothelial cells from venous malformation using the Rho-associated protein kinase inhibitor Y27632. J Plast Surg Hand Surg. 52: 60-66, 2018.
- Kurita M, Ozaki M, Ihara A, Kaji N, Harii K. Intradermal injection of normal saline prevents cutaneous complications associated with sclerotherapy for superficial venous malformations. Plast Reconstr Surg 129: 772e-774e, 2012.
- など
AIを用いた画像解析の研究
AIを用いた画像解析技術により、2次元の動画において顔面や手指などの特徴点の座標を3次元的に抽出することができます。この技術を応用し、①顔面神経麻痺患者における顔面表情運動の定量評価、②手指関節可動域の自動計測、を行うアプリケーションの開発を目指し、株式会社NTTDATAと共同で研究を行っています。
難治性創傷に関して、創傷の専門家以外の医療従事者でも創傷の状態を評価できることを目的とした研究も行っています。例として褥瘡の画像データをimage recognitionあるいはimage segmentationという技術を応用し、形成外科医が判断した教師データとして畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に読みこませ学習をさせることで、潰瘍全体、壊死組織、肉芽組織の判別良好にできるようになりました。今後、さらなる研究の拡大を目指しています。
業績
- Ohura N, Mitsuno R, Sakisaka M, Terabe Y, Morishige Y, Uchiyama A, Okoshi T, Shinji I, Takushima A.:Convolutional neural networks for wound detection: the role of artificial intelligence in wound care.J Wound Care, 1;28(Sup10):S13-S24, 2019.
その他、若手を中心にそれぞれ独創的な研究も行っています。