「リハビリテーション(Rehabilitation)」の語源は、Re(再び)とHabilis(適する)です。つまり、「人がもう一度自分らしく生きること」に関わるすべてがリハビリテーションといえます。
その中で理学療法士は、「理学療法学」を基盤として、主に身体機能の改善によって「できること」を増やしていく役割を担います。具体的には、寝ている状態から起き上がり、座り、立ち上がり、歩くまでの過程や、手を上げる、投げる、などの基本的な動作について、それぞれが「できる」ように、また「よりよくできる」ようになることをサポートしていきます。
そのため「理学療法学」は、医療分野のみならず、これから超高齢・少子化を迎えて多様化する社会を、健康や予防の側面から支える重要な学問としても大変期待されています。
理学療法士は、日常生活で問題を抱えている活動や動作を詳細に分析し、その原因を筋や骨格系、脳神経系、呼吸・循環系など多岐にわたる身体機能から統合的に考えていきます。そして、問題となっている身体機能の低下に対して、それらの回復につながる具体的な運動療法プログラムを考え、対象の方々が適切に運動を実践できるようにサポートします。従って、より質の高い運動療法プログラムを実施できる理学療法士になるためには、身体のメカニズムに加えて疾患や運動療法に関する「知識」、適切に身体機能を検査・測定する「技能」、それらをまとめる「考える力」が必要になります。
また、理学療法士が求められる分野は、急性期医療に代表される最先端医療から福祉分野、さらにはスポーツ障害の予防や健康増進に至るまで多岐にわたります。つまり、年齢や性別を問わず多様な背景をもつ方々に関わる必要があります。そのため、医療や社会の中で理学療法士として活躍するためには、高度な専門性に加えて、幅広い視点に基づいた多様な価値観への理解が必要になります。
杏林大学理学療法学専攻では、高度に専門的な「知識・技能・考える力」を身につけること、「多様な価値観への理解」を育むこと、この2点を教育方針の柱としています。
高度な専門性を身につけるために、杏林大学では充実した教育環境を活かして、カリキュラムに様々な工夫をしています。例えば、高度に専門的な「知識」を基礎から分かりやすく学ぶために、動作の解析や、筋・脳・循環・呼吸の活動を可視化する計測機器を用いた実習を、下位学年から取り入れています。さらに卒業研究では身体のメカニズムをより深く学ぶため、生命科学的手法を用いた基礎的研究や、他学科と連携した共同研究などの多様な研究を行っています。
また「技能」については、少人数教育の特長を活かした丁寧な実技指導に加え、最先端医療を提供する医学部付属病院と密接に連携し、早期から高度な専門性に触れることができる実践的な環境を整えています。
そして、知識と技能を統合する理学療法士ならではの専門的な考え方については、4年間の演習や実習授業を通じてフレームワークとして学びます。特に2年生から始まる毎年の臨床実習では、実際の臨床現場での経験によって「考える力」を養い、「理学療法学」に基づいた専門的な考え方を身につけることができます。
加えて、身につけた専門性を実践の場で確認するためには、臨床実習での経験が重要になります。杏林大学では、まず臨床現場で求められる知識や技能の基盤を形成するため、医学部付属病院との密接な連携を活かし、1〜2年生の臨床実習では全学生が付属病院での実習を経験します。その上で、より多分野での専門性が高くなる3〜4年生の臨床実習では、医学部付属病院のみならず150を超える連携実習施設の中から臨床場面の経験を積む機会を設定しています。
杏林大学では、このような取り組みを、杏林大学全体の方針の一つである「少人数教育」を実践する環境で、学生1人1人が密度高く経験することができます。
杏林大学は、大学全体として地域に密着した社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。理学療法学科の学生も、地域の健康予防教室から障害者スポーツまで、在学期間中に幅広い分野の活動に関わることができます。また、井の頭キャンパスには総合政策学部や外国語学部があります。他学部との共同研究や交流を通じて、医療の中だけでなく、国際的な立場で「理学療法学」の専門性を社会に還元する視点も学ぶことができます。
さらに、杏林大学は大学として、日本だけでなく海外で国際的に活躍できる人材の育成にも力を入れています。日本は世界で最も早く超高齢社会に突入しています。そのため、日本での障害予防や健康寿命の延伸に対する取り組みは、今後世界の多くの国で必要とされると考えられています。従って、「理学療法学」の専門性に対する期待は国際的にも高まっているといえます。
保健学部でも多くの海外研修が設定されており、将来的に海外で専門性を活かすための視点を養う機会が用意されています。
また近年、杏林大学は医学や保健学にデータサイエンスの手法を活用することにも積極的に取り組んでいます。保健学部にはデータサイエンスを専門とする多くの教員が在籍しており、医学部や保健学部をまたぐ横断的な研究の取り組みも始まっています。
杏林大学で学んだ「理学療法学」は、大きく「臨床・研究・社会貢献・教育」の分野で社会に還元することができます。
杏林大学の理学療法学専攻は、2009年に理学療法学科として開設されて以来、多くの卒業生が幅広い分野で活躍しています。臨床の専門家として、最先端医療に関わる大学病院やリハビリテーションの中心となる回復期リハビリテーション病院はもちろんのこと、地域の健康増進活動で中心となる卒業生や、一流アスリートを支える立場で活躍している卒業生もいます。また研究者として、日本を代表する研究機関で最先端の研究に関わる卒業生や、行政で健康増進に取り組む卒業生、教育者として大学で後進の理学療法士を育てる道に進んだ卒業生もいます。
杏林大学には、密に連携する三鷹キャンパスの医学部付属病院に加えて、保健学部9学科と文系2学部があり、かつ最先端の計測機器や豊富な専門書を揃えた井の頭キャンパスがあります。
さらに、理学療法学科には多分野にわたり、研究や社会貢献活動の実績が豊富な教員が数多く在籍しています。
また、杏林大学の理学療法学科では、学びをサポートするためにオンライン環境による学習支援システムを積極的に活用するなど、今後医療の世界でも必要となるICT(Information and Communication Technology)に触れながら学ぶ環境も整っています。
つまり杏林大学の理学療法学科には、丁寧な少人数教育によって学生1人1人の「知識・技能・考える力」を育み、かつ多様な価値観を身につけることができる環境が整っています。
最後に、井の頭キャンパスを囲む吉祥寺・三鷹エリアは日本を代表するサブカルチャーの発信地であり、豊かな自然と個性的なカフェ、雑貨屋、ライブハウスなど多様な価値観が入り組んだ都内でも有数の学生街です。「人がもう一度自分らしく生きること」を考えることができるように、に関わるすべてがリハビリテーションといえますので、勉学だけでなく、大学生活4年間でしかできない貴重な経験を通じて、人が自分らしく生きていくことを考えることができるような、豊かな人間性を育んでください。
皆さんには杏林大学で過ごす4年間で、高度な専門性と多様な価値観を身につけ、そして自分自身の将来を自ら選択することができるような人材として卒業してもらいたいと考えています。ぜひこの素晴らしい環境で、私たちと一緒に「理学療法学」を学び、医療の分野はもちろん、社会の中で幅広く活躍できる人材になることを目指していきましょう。
教員一同、皆さんのご入学を心よりお待ちしています。